リスク


福島第一原子力発電所の事故について東京電力から今回の大震災が「想定外」だったというコメントがありそれに対して「専門家が想定外といって逃げるのはどうか」という批判の声が多い。確かに「想定外」だったというコメントは少し安直であるし、情けない。海外にも目を向ければマグニチュードが9.0を超えた地震はこの100年で今回の震災の前にすでに4件起きている。原子力発電所という一歩間違えば大きな危険につながる施設の設計に関して今回の地震やその後起きた津波の規模が想定外だったというのは、もしそれが本当だとすれば、お粗末な話である。

一方で、それが「想定内」だったとしてそうした地震が起きても全く問題ないように設計しておくべきだったかどうかということはまた別の話だと思う。そこはいくら人命に関わろうとも費用対効果の問題を考える必要がある。たとえば数百年に1回の事故を完璧に防ぐための施設を造るために電気代を二倍にする、あるいは、増税するという話があれば、それこそ事業仕分けでカットされそうな話だ。地震が起きて時間があまりたっていない今であればどうかわからないが、地震が起きる前であれば、数百年に1回の事故を完璧に防ぐための負担は受け入れない国民が多かったのではないか?そこはリスクの大きさとそれを軽減するためのコストを考える必要がある。国民が望むレベルまでリスクを下げるためにかかるコストが国民の負担できる額を超えるのであれば原子力発電を諦めざるを得ない可能性もある。

自分で計算したり調査したりしてみたわけではないが識者の話を聞いたり読んだりする限り原子力発電は比較的低コストで安全な方法に思える。今回の事故の影響で、今後、増設に反対の声が上がるのは避けがたく、また、原子力発電所の近くに住みたくないという人は増えるだろう。もちろん原子力発電所にはリスクがある。しかし、そのリスクを過大評価して原子力発電そのものの使用を止めるのは勿体ない。よく言われることだが交通事故を恐れて車に乗らない様なものだ。

沖縄の米軍基地の問題も同じだが原子力発電所についても国全体の利益のために特定の地域がリスクを負わねばならないという問題もある。難しい問題ではあるが、特定の地域がリスクを負うとき、その地域に住む人々は税金の優遇や補助金でリスクに見合ったリターンを得ることができればある程度不公平は緩和されるのではないか。実際、米軍基地についても原子力発電所についても詳細は知らないが近隣の自治体に対して多額の補助金が出ているはずだ。経済効果や税収上のメリットもある。それでも足りなければ各自治体が誘致合戦をする程度までの優遇をしてもよいかもしれない。

一度事故があると人は過度に恐怖心を持つようになる。エレベーターに閉じ込められた経験のある人は、エレベーターに乗りたくないと思うだろうし、車に乗っていて交通事故に合った人は、車に乗りたくないと思うだろう。常に合理的な判断がよいかというとそうでない場合もあるかもしれない。しかし、多くの場合は、その場の感情で判断するのではなくリスクとリターンを考え合理的な判断をする方が自分にとってハッピーで後悔の少ない結果につながると思う。事故による恐怖心のために冷静な判断ができなくなるとさらに不幸な選択をしかねない。原子力発電所を今後どうするかということについては冷静に考えていきたい。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。