市場価値


市場価値という言葉を聞くと公平で客観的であるような印象を持つ。確かにそういう面はあると思うが、それが唯一の絶対的な「適正」な価値を示しているかというとそれは違う。なぜなら受け手によってそのモノやサービスの価値は変わるからだ。自分が今所有する車を市場で売ると10万円にしかならないとしても、自分にとっての価値が10万円しかない、ということにはならない。その人にとっては新車より価値のある可能性も十分にある。車に限らず、自分で使い込んでいるモノは、使い込めば使い込むほど自分にとっての価値が上がる。その一方で、他人にとっての価値は下がっていく。

企業の人材についても、人材紹介会社が「自分の市場価値を知ろう」という感じで宣伝しているが人材に「適正」な価値は存在しない。他人にとっての自分の価値という、より深い話は置いておいて、企業にとっての人材の価値だけに絞って考えてみても、唯一絶対的といえるような適正価値は存在しない。ある企業で高い付加価値を出している人が市場で高く売れるとは限らない。その企業のシステムの中では、持ち味を発揮できても、他の企業では活躍できないこともある。その企業としては年収1000万円払う価値があるけれど人材マーケットでは300万円くらいしか価値がないということは十分ありえる。

多くの人は企業に縛られずに生きていけるような汎用的なスキルを身につけたいと思うだろう。そういうスキルを持っていれば、今勤めている企業に何かあったときに、フリーエージェントを宣言して自分の「市場価値」を確認し、より高く評価してもらえる会社に移ることができる。仮に転職しなくても、いつでも転職できる状態にしておくことで今の会社に対して強い交渉力を保つことができる。

しかし、企業と人との関係を考えたときに市場価値を気にし過ぎるのは考えものだ。市場での価値ばかり考えていると、その会社でしか通用しないスキルを磨くことに対して、消極的になる。一方で、企業側は、市場で高く評価されない人に対して、転職されるリスクが低いので給料を抑えるようになる。その結果、企業は移り気な社員を優遇し、忠誠心の高い社員を冷遇するようになりかねない。

企業と人が長期的な信頼関係を結ぶためには、市場価値とは別に独自の価値基準を持つこととお互いのコミットメントが大切だ。社員はその会社へいかに貢献するかということを考え、会社は市場価値に見合った賃金ではなくその会社における付加価値で賃金を決める。ある社員が仮に年収300万円で自社に留まってくれると確信しても本来の働きが年収1000万円に相当するのであればその額を支払う。市場価値に囚われずにその会社独自の基準で評価することによってフェアで長期的な関係を築くことができる。


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