目的と手段


目的と手段は簡単に入れ替わる。もともとある目的を達成するためにやっていたはずのことがいつの間にかそれ自体が目的になってしまう。政治家になって活躍するために選挙に勝とうとしていたはずなのに、逆に、選挙に勝つために政治家として実績を残そうとする。あるいは、より大きなことを達成するために資金が必要だったのに、いつの間にか、お金のために何かを達成しようとする。

入れ替わらないまでも、目的と手段は混同されがちだ。将来の目標を聞かれたときに職業の種類で答える高校生は多い。しかし、職業は基本的に何かを実現するための手段であって、目的にはなりにくい。本当に自分のやりたいことを考えると必ずしもその職業でなくてもよいということも多い。その職業につくことが目的なのか、その職業を通して実現したいことが目的なのか、

目的と手段は、全く違うもののように見えるのにどうして混同してしまうのだろう?

多くの場合、手段は小目的である。地点Aから地点Zに行くために、まず地点Bに行こうと考える。この時点で、Bに行くことは手段に過ぎないが、同時に小目的になる。ひとまずBにたどり着くまでは、Bのことだけを考えるようになる。こうなると、地点Bには用はないのだが、ついそこにこだわってしまう。地点C経由でもよいかもしれないが、一度Bを小目的に設定すると、頭の中はBのことでいっぱいになり、本来の目的Zを見失ってしまう。途中で状況が変わって、Bに行くよりC経由の方が簡単にZに辿りつけるということがわかってもなかなか軌道修正ができない。Bが手段から目的に変わってしまうのだ。実は目的と手段は本質的には同じものなのかもしれない。どちらも同じ「目的」で違いは「大」か「小」かの相対的なものに過ぎないのではないか。地点Bが小目的で、地点Zが大目的だと思っていても、よく考えてみると、もっと大きな大大目的の地点ZZがあり、実は地点Zは、地点ZZに行くための手段に過ぎないかもしれない。

目的は人が決めるものなので何であってもよいと思う。だから元々手段と考えていたことが目的に変わっていけないわけではない。ただ、それが本当に自分の目指すべきところなのか、ということは時々振り返った方がよい。そうでないと小目的にこだわり過ぎて、それを達成した挙句、実は自分が本当に実現したかったことから遠ざかっていた、ということも十分有り得る。


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