民意の反映


ロシアが2月にウクライナ侵攻を開始して以来、その行動を非難する形でロシアから撤退する企業が相次いだ。マクドナルドは店を閉め、アップルはiPhoneの販売を停止した。ユニクロを展開するファーストリテイリングは当初営業継続することを発表していたが批判が相次ぎ営業停止を余儀なくされた。一般消費者の企業を選別する目が年々厳しくなり、企業の経営者も消費者の声に耳を傾けざるを得ない状況になりつつある。

選挙で国民のリーダーを選べない中国は民主主義の国とは言い難いが習政権が国民の声を聞かないということではない。むしろ西側の先進国のリーダーと同じか、それ以上に国民の声に敏感なように見える。国民の支持があろうがあるまいが一党独裁の体制は維持していくだろうが、国民による支持がある方が政権はより安定する。国民の幸せを願っているかどうかはわからないが国を強くしたり体制を維持したりするために国民の不満はできるだけ取り除き暴発を防ぐことは需要だ。

一方で民主主義の国であっても、国民の声が政治に反映されるとは限らない。たとえば日本で自分の声が政治家に届いていると考える人はどれだけいるだろうか。投票率も低く、政治への関心があまり高くない人もいる。アメリカでは分断が進んでおり国民全体ではなくその政党を支持する人の方を向いた政策に傾きがちだ。

指導者を選挙で選ぶことをしない企業の活動や権威主義の国の政治においても民意は一定程度反映されるし、自由で公正な選挙で指導者を選ぶ民主主義の国であっても民意が十分に反映されるとは限らない。それでもやはり国民が指導者を選ぶ制度が確立している方が望ましいのは修正能力が高く指導者の暴走を止めやすいことにある。もちろん、民主主義だから指導者の暴走を止められる、とは限らないが民間企業や権威主義の国に比べれば、指導者の行動を咎めやすい。テスラ創業者のイーロン・マスク氏がツイッター社の買収提案をして話題になっているが影響力のある大企業を1人の権力者が自由に経営できるようになるのは心配な面もある。中国で何らかの理由で(十分ありえることだが)政府に対する国民の不満が高まったときに政権交代という選択肢はなく、政府はむしろ国内外に強権的な姿勢を示すようなことになりかねない。日本を含めた西側諸国の民主主義の形は様々な欠陥はあるものの今のところそれなりに機能している。ただ、1990年代に一旦勝負がついたように見えた自由民主主義の勝利は未だ自明ではない。世界の不安定さが増す中で大企業や権威主義の国の統治のあり方も参考にしながらよりよい形を探っていく必要がある。


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