10,000時間ルール
米国のジャーナリストであるマルコム・グラッドウェル氏は「Outliers」という著作の中で「The 10,000-Hour Rule」という法則を紹介している。何かを習得しようとしたら10,000時間の鍛錬が必要になる、というものだ。例として、ビートルズの下積み生活やビル・ゲイツの中高時代のプログラミング経験を挙げている。ビートルズはデビューアルバム「Please Please Me」を出す前に数年間ドイツのハンブルグのクラブで毎日ひたすら長時間に亘って演奏した経験があり、世界的に有名になるまでの数年間で1,200回ものライブをこなした。ビル・ゲイツは10代前半から高校卒業まで60年代から70年代にかけてまだPCがない時代に、高校や大学にあるコンピュータを使ってひたすらプログラミングを行った。7か月で1,575時間のコンピュータ時間を使い切ったこともあり、ハーバード大学をドロップアウトして起業するまでに優に10,000時間を超える時間をプログラミングに費やした。ビートルズやビル・ゲイツはこれらの経験を通して他の人たちと差別化できるような能力を身に付けたことで大成功に至ったという。
よく考えると、一言で音楽、プログラミングと言ってもいろいろな範囲があり得るので、すべてひっくるめて10,000時間なのか、各技能の習得に10,000時間なのか、明確ではない。たとえば野球であれば打撃の時間に10,000時間、守備の時間に10,000時間なのか、2時間の試合で4打席立っただけでも2時間とカウントするのか、あらゆる分野のことをざっくり10,000時間としてまとめることは論理的に無理な部分もある。ただ、1つのことに10,000時間というのは感覚的にはしっくりする。1日8時間を週5日、それを5年間積み重ねると10,000時間だ。何かを習得するのにそれくらいの時間が必要というのは納得しやすい。
もちろんそれは十分条件ではなく必要条件だ。つまり10,000時間かければ誰でも何かを習得できるというわけではなく、極められるかどうかは、かける時間に加えて努力の質や元々の能力にも因る。それでも目安として、または目標として、10,000時間を意識することは時間の有効な使い方につながる。たとえば毎週末8時間ずつ、1年を通してやり続けると年に800時間ほど確保できる。それを12~13年かければ今の仕事を続けながらも本業とは別の分野に熟練することができるかもしれない。音楽でもプログラミングでもスポーツでも語学でもいい。中高生であれば部活をせずに放課後と週末の時間も使えば週に40時間程度確保できる。そうすれば年間2,000時間、5年で10,000時間を達成できる。大学生であれば長期休暇も含めてさらに多くの時間を捻出することが可能だろうから4年間で10,000時間を作ることもできるはずだ。本業である学問にすべての時間を費やすということであればさらに短い期間で10,000時間に達するだろう。
やりたいことがたくさんあって一つのことだけに10,000時間も使いたくない、という考えももちろんある。何に時間を使うかはそれぞれの人の全くの自由だ。ただ、「The 10,000-Hour Rule」を気にしながら自分の様々な可能性を思い描くと楽しいし、1つのことに時間を使うにしても多くのことをやっていくにしても、限られた時間を大切に使う意識が強まる。
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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。