正攻法と伸びしろ


昨年の大相撲秋場所で大関貴景勝は優勝決定戦で進境著しい熱海富士を退け、優勝を果たした。ただ、格下の若手力士に対し決定戦の立ち合いで変化し正面から当たらなかったことには批判の声も少なくなかった。片や大関霧島は次の九州場所の14日目に相星で並んだ熱海富士を寄り切りで破り、そのまま優勝を決めた。平幕ながら二場所連続で優勝争いに絡んだ熱海富士も立派だったが正面から受け止め勝ち切った霧島が貫録を見せた。立ち合いの変化はルールに違反するわけでもなく、怪我で万全の状態ではなかった貴景勝が横綱不在の場所で勝負に徹したことは理解できる。とはいえ、一相撲ファンに過ぎない素人には正面から当たって実力の差を見せつけた霧島の方が伸びしろがあるように見えた。

立ち合いの変化はこれからの成長よりも今の星を優先する行為であるように思う。強い力士に求められる力をさらに伸ばす代わりに1つの勝利を得る。その場所での優勝が自分にとって何よりも重要であれば今後のことよりも勝つ確率を少しでも高める方法を採るべきだ。ただ、今後の成長よりも今の一勝の方が大事な場面はどれだけあるだろう?相撲取りにとって関取になるのとならないのとでは雲泥の差がある。であれば十両に上がるかどうかがかかる一戦ではその後の成長よりも内容に関係なく価値を目指すべきだろうか。ただその段階で勝ちに拘り過ぎる勝負をしていると十両に上がって念願の関取になってもその後の成長余地がなくなるかもしれない。では幕内はどうだろう?幕内力士になればテレビで見る人も多くなり知名度も圧倒的に高まる。でもそこだけを目標にしてしまうと役力士にはなれないかもしれない。だとすれば、小結、関脇、大関まで視野に入れて努力し、そこまでいけばよしとするか。超人的な努力でそこまで辿り着いたとしても、そこが最終目標だと横綱には届かないかもしれない。では幕内最高峰の横綱になれるのであれば他のすべてを擲つべきか。しかし、伸びしろのない状態で横綱になると横綱になってからあまり勝てず弱い横綱として記憶される存在になってしまうかもしれない。

そう考えていくと今後の成長よりも目の前の一勝を取るべきときというのはどこまでいっても明確には訪れない。もちろんそれぞれの価値観によるので、たとえば希望の大学に入るためだったらどんな手でも使う、という考えもあるかもしれない。ただ、多くの場合は、目の前の一つの結果よりもその後の長きにわたる成長の方が大事なように思う。総合型選抜でも一般選抜でも結果は大事だがそれ以上に内容が大事だと感じることが多い。結果に拘るあまり小細工を弄するより正面から当たっていく方がその後の成長が期待できる。


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