must-haveとnice-to-have
私たちが日常購入するものにはどうしても必要なもの(must-have)と必ずしもなくてもよいがあれば役に立つもの(nice-to-have)がある。通常、食料や水は前者、ゲームや漫画は後者に含まれる。「通常」と書いたのは、人によっても目的によっても何がmust-haveで何がnice-to-haveは変わってくるからだ。充実した生活を送るためにゲームや漫画はmust-haveという人もいるだろう。生活していくのにパソコンやスマホが欠かせないという人もいるし、本や音楽のない生活が考えられないという人もいる。must-haveとnice-to-haveの境界は意外と曖昧なので自分でもはっきりとは把握してないことも多い。衣服はmust-haveであっても、高級で高価なものはnice-to-haveになる。2,000円以上のTシャツはnice-to-haveだと思うかもしれないし、10,000円まではmust-haveの範疇に入ると判断するかもしれない。
大学のAO推薦入試では多くの場合、出願書類として志望理由書が課される。なぜその大学学部を志望するのかを書くのだが、その大学学部の必要性を強く言えば言うほど受け入れられやすい。大学側からしたらその大学を本当に必要として入学したらその環境を使い倒してくれるような人に来てもらいたいと考えるからだ。その環境を強く必要とする人ほど入学した後も勉学に励んでくれるはず、という期待もある。
その大学学部の必要性は、自分の目標(貧困をなくす、格差をなくす、等)を掲げて、その実現のためにその大学学部での学びが不可欠であることを示すことで言いやすい。ただ、これは簡単なようでなかなか難しい。元々自分の成し遂げたいことがあって、その実現のために最適な大学学部を探した結果選んだところであれば、なぜそこがいいのかを言いやすいが、多くの受験生の場合は、将来やりたいことは明確ではなく、また、何となくの憧れで志望校を決める。それ自体は悪くないと思うし、そこから段々と自分が本気でやりたいと思えることを探していけばいいと思うが、志望校ありきで考えると志望理由を考えるのに苦労する。何とか将来やりたいことを見つけて、志望校で学べることの中からそれに関連したものを探すと大抵nice-to-haveの学びになる。つまり、それを学べば、たしかに将来やりたいことに役立つだろうけど、それって本質的に必要?というようなものだ。心理学を学んで他の人の気持ちを理解する、経済学を学んで世の中の動きを知る、というような何をやるにしても役立つような汎用性の高い学びは便利なので選ばれることが多いが、must-haveになることはあまりない。
nice-to-haveの学びしか挙げられないとその大学学部の必要性は伝わらない。その時点ではまだ自分に本当に必要なことがわかっていないか、その志望校がふさわしくないかのいずれかだ。自分に必要な学びを追求し続けてmust-haveの学びがその大学にあることが言えるようになって初めて志望理由に説得力が加わる。
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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。