冗長性


私は基本的に無駄が嫌いでシンプルで必要十分なことが好きだ。鞄の中も、財布の中も、必要なものだけを入れておきたい。机の上もよく使うものだけを置いておきたい。しかし一方で時には冗長性も大事かなと思うことがある。

アップル社のスティーブ・ジョブズ氏はスタンフォード大の卒業式で行った有名なスピーチで、後から振り返るとすべての経験が今につながっているが当時はそれがどこにつながるのか考えもしなかった、と言っている。

そのとき必要十分と思うことだけをやっていては未来に広がりがない。どきには無駄と思われることをやってみることも実は有意義なのかもしれない。ジョブズ氏の場合は、大学を中退した後、単位を考えずに趣味で受講したcalligraphy(書法)の授業で学んだことがMacintoshという革新的なパーソナル・コンピュータの開発につながったという。

冗長性が必要になるのは、必要十分なことだけをやっていると間違いがあったときに修正できなくなるからだ。コンピュータによる計算やデジタルの通信は正確無比であるように見えるが、一つ一つのデータを見ると実はそれほど完璧ではない。一見完璧に近く見えるのは、データのやり取りの仕組みが冗長で、無駄の多い代わりに、訂正がしやすいような仕組みになっているからだ。人生の目標に向かって自分の考える道筋も当然完璧ではない。目標自体が変わるかもしれないし、仮に自分にとって完璧な目標を立てることができたとしてもそれに至る最善と思われる道は状況に応じて変わってくるはずだ。すべてをあらかじめ見通すことは難しい。何がどう転ぶかはわからないのだ。そういうときは、冗長性があった方が、変化に対応しやすいのではないだろうか?

高校で大学受験に出題される科目だけを学んだり、大学で将来の仕事に役立ちそうなことだけを学んだりするのは、一見効率がよさそうだが、冗長性がなく危うさを感じる。多くの場合、将来の自分自身とそのときの周りの環境についての想像力が足りないために、将来役立つことを正しく推測できない。どうせ正しく推測できないのであれば、ジョブズ流に自分の興味のあることをとことんやっておくのもよいかもしれない。難しいのは勉強と「遊び」、あるいは、仕事と「遊び」のバランスをどのように取るかということだ。「遊び」の部分、あるいは、冗長性にどの程度のリソースを割くべきか。数々のヒット商品を生み出してきた3M社の「15%ルール」が参考になるかもしれない。15%ルールというのは勤務時間の15%を自分の好きな研究テーマに費やしてよいという社内ルールだ。Google社も同様の20%ルールを実践している。もちろん正解はないのだが、今やるべきことをしつつも15%とか20%程度の時間を「遊び」の時間にしておくと柔軟に粘り強く目標に向かうことができるかもしれない。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。