成功事例からの教訓


成功した経営者の事例を読むとそれぞれに教訓を得る。しかし、その教訓を活かすことは簡単なことではない。

その理由の一つは、多くの場合、ある成功事例に対し、それと全く反対の手を打って、成功した事例も存在するからだ。たとえば、大事な場面で大胆な思い切りのよさが成功の要因になったという事例はよくある。大恐慌で皆が株を売っていたときに割安の株を買い漁って大儲けした、とか、勝負どころで全財産を賭けて事業拡大にチャレンジした、とか、そういう事例だ。しかし、一方で、博打を打たず、背伸びせず、自分たちにできることをこつこつやってきた、ということを成功の要因として挙げる人も少なからずいる。失敗の例をみても、大胆にやりすぎたために失敗した例もあれば、大胆さが欠けるために大きなチャンスを逃した例もある。何らかの形でリスクをとることはもちろん必要だが、どのタイミングでどこまでリスクをとるべきなのかは難しい。経営者がスピードを重視して成功してきた、という事例もよく耳にするが、拙速のために失敗した事例も数多くある。

ことわざもあまり頼りにならない。善は急げ、なのか、急いては事をし損じる、なのか、あるいは、石橋をたたいて渡るべきなのか。虎穴に入るべきなのか、危うきには近寄らない方がよいのか。

成功者事例の教訓を活かすのが難しい理由のもう一つに、成功事例を見ると大事な局面がどこだったかということが明確だが、現在進行形だと局面の判断が難しいということがある。子供の頃、プロ野球の試合を球場で見たとき、随分と淡々と試合が進んでいくなあ、と感じた覚えがある。いつもはテレビで「ホーーームラーーーン!」とか「さんしーーーん!」とか叫んでいるアナウンサーの声がなかったからだ。自分の人生にももちろんアナウンサーの声はないし、映画のような音楽もない。成功者の事例は、成功した後に書かれるものなので、どこが勝負どころだったかがわかりやすく書かれている。だから読み進めていくうちに読者にも勝負どころが自然とわかる。自分もそういった場面に遭遇すればその成功者がとった打ち手が取れる気がしてくる。しかし、実際には人生は淡々と進んでいくもので、重要な場面に遭遇しても気づかずに終わってしまいがちだ。勝負どころを見極めるのは意外と難しい。

上記のような理由で成功者の事例を活かすのは簡単なことではない。成功者の事例をいくら読んでも、大胆さが大事だ、とか、スピードが大事だ、といった単純な教訓は得られないと思った方がいい。ただ、成功者の事例が全く活かせないわけではもちろんない。成功者の事例には、自信と謙虚さ、大胆さと繊細さ、スピードと慎重さ、熱い思いと冷静さ、といった一見、二律背反するような二つの資質をどのようにバランスをとって、どのような場面でどのように発揮していくか、という問いに対するヒントがたくさん詰まっている。答えを見つけるのではなくヒントを探すという気持ちで読めば得るものは大きい。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。