ブラックボックス


複雑なものの仕組みを理解しようとするとき、分からない部分を中の見えないブラックボックスとしてまとめて、その中身を無視することによって、全体像を捉える、というのは賢いやり方である。ブラックボックスの中身の構造はわからなくてもどういう入力をするとどういう出力があるか、を理解すれば、全体の仕組みを理解できる。細かいところを気にしすぎていてはいつまでたっても全体がわからない。自動車の仕組み大まかに知ろうと思ったら初めはエンジンをブラックボックスとしてとらえておけばよい。エンジンの原理を知らなくてもその入力と出力の部分を理解していれば他の部品を組み立てて動く車を作ることができる。

機械の原理の理解だけでなく、あらゆることの理解のために意識的・無意識的に人はわからないところをブラックボックス化する。スーパーマーケットで何かを購入する際に、それがどのように作られてどのように運ばれて今その店の棚にあるのか、ということを意識することはあまりない。銀行に資金を預ける際に、自分を預けた資金がどこに行って、どういう原理で金利がつくのか、ということを考える人は少ない。

ブラックボックスは便利なので、自分が知る必要のないところ、あるいは、知りたくないところは、ついブラックボックス化をしてしまう。ブラックボックス化して知らないままの方がいいこともあるかもしれない。しかし、ブラックボックス化してその中身を全く考えないことのデメリットもある。

AIJ投資顧問の年金資産の詐取事件では、顧客が見せかけの金利に騙されて多額の資金を失った。運用の部分がブラックボックス化され、顧客は投資した資金がどのように運用されているかを理解せずに、アウトプットとして高金利を期待した。仮に運用の詳細がわからなくても、ブラックボックスの中をちょっと覗いて見るぐらいはできたはずだ。どうしてそんなに高金利で運用できるのか、と考えてみてもよかった。

自分の頭を整理するのにブラックボックスは便利だ。ブラックボックス化した部分についてはオブジェクト指向的にインプットとアウトプットだけを意識してその原理を意識する必要がない。しかし、できることなら中身の見えない完全なブラックボックスではなく、中身が透けて見える半透明な箱にしておけるといい。すべてのことを自分の頭で理解するのは難しいし、ときに億劫に感じることもある。だからこそついついブラックボックス化してしまうが、無批判にブラックボックス化するのではなく、ブラックボックスの中身の原理に興味をもっておきたい。どんなに難しく思えることでも、少しずつ丁寧に考えれば大抵のことは理解できる。実際には、十分理解できるようなことでも見た目が難しかったら面倒だったりして自ら完全なブラックボックスにしてしまうことが多い。今、ブラックボックスで考えていることについてその中身の原理を理解することは実はとても楽しい。時間がないときにブラックボックスを使って考えるのは仕方がないにしても常にその中身を知ろうとする好奇心は失わないようにしたい。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。