サンプル問題から2021年度大学入試改革を読む


コロナ禍の影響で先行きが見えにくい入試改革元年の大学受験だが総合型選抜の出願はいよいよ締切の迫るところが多い。一方で、一般選抜の方も新しく始まる大学入学共通テストや大学の個別試験を4~5か月後に控えており、そろそろ過去問に手を出し始める受験生も多いだろう。さてその過去問について共通テストもそうだが今回新しい形での入試を始めるところでは当然ながら過去に出題された問題は存在しない。代わりに多くの大学で公開されているのがサンプル問題だ。

早稲田大学政治経済部の2021年度一般選抜は200点満点のうち、大学入学共通テストと学部独自試験が100点ずつを占める。学部独自試験は今年に入り2種類のサンプル問題が公開された。いずれも1問目は日本語の課題文に対して、その内容理解を問う選択式および記述式の問題が課されている。最新のサンプル問題では「一票の格差」についての講義を文章にしたものが課題文として提示されている。表やグラフだけでなく、Loosemore-Hanby(LH)指標の計算式も提示されておりその理解も求められる。回答方式は選択式だけでなく記述式のものもある。2問目は英語の課題文に対し、内容理解を確認する問題が課される。最初に発表されたサンプル問題では、グラフや表の読み取りも含まれていた。3問目は英語ライティングの問題だ。「AIは人間の知性を超えるか」「印刷媒体はなくなるか」といった問いに対し、根拠とともに自分のポジションを説明する。3問ともいずれも難解なものではなく、大学の授業についていくためにはむしろ必要なレベルだろう。早稲田政経では、「英語」や「国語」ではなく、敢えて科目の名称を「総合問題」としている。基礎的な学力は共通テストで確認した上で、学部独自試験ではより直接的に政治経済学部の授業で学ぶ準備ができているかを確認しているような印象を受ける。

上智大学は一般選抜で「英語」「国語」といった従来の科目の枠に当てはまらない、学部学科独自の問題を課す。ほとんどの学部学科で長めの記述問題を含める。たとえば文学部新聞学科のサンプル問題では、「新型コロナウイルスに関するニュース」について1000字程度作文を書くという問題が提示されている。総合人間科学部社会福祉学科では、例として、外国人労働者受け入れ拡大について、600字~800字で意見を書かせるような問題を挙げている。上智の場合も早稲田政経と同様、基礎的な学力は共通テストで簡易的に確認し、学部での学びに、より直接的につながる力を独自の試験で念入りに測るような傾向がある。

青山学院大学も2021年度の一般選抜で記述式の問題を大幅に増やす。学部によってA方式からD方式まで複数の方式の入試を用意しているが、募集人員ベースで一般選抜の40%が小論文等の記述式の問題を課すようになる。たとえば教育人間科学部教育学科では課題文を要約し、自分の考えを800字以内で論述するような問題が想定されている。また、国際政治経済学部国際コミュニケーション学科のサンプル問題では英語100 wordsで課題文に対する自分の意見を述べるような問題が課されている。青学もやはり論述を課す方式では、基本的に共通テストで基礎学力を確認する形になっている。

従来は英数国理社という試験科目を学部ごとに用意していたのがその部分は大学入学共通テストに任せる。その上で、より学部学科に特化した、その学部学科で学業に励むための準備ができているかどうかを測るような独自の試験を課す。もちろんすべての大学学部でそのような変更を2021年度に予定しているわけではないが、入試の効率や学部学科とのマッチングを考えると、この方向性が一つの解なのかもしれない。


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