筑波大の大学教員による推薦入試


東京大学から推薦入試の概要が発表されたのに続き、筑波大学でも「入学者選抜方法等の改革」についての発表があった。今後は推薦入試の種類を増やし、定員に対する推薦入試入学者の比率を段階的に40~50%まで引き上げる計画だという。その中でも日本経済新聞が大きく採り上げていたのは、「大学教員による推薦入試」だ。日経の報道によれば、「大学の研究室に見学に来たり、教員が出前授業などで出会ったりした優秀な高校生を推薦。書類審査や面談、論文試験などを通じて合否を決める」という。

私は基本的にAO入試や推薦入試の導入に賛成で、筑波大が推薦入試の比率を40~50%まで増やすということも正しい方向だと思っている。今回の入試改革で掲げている「自立して世界的に活躍できる人材を育成するため、本学の教育を受けるのに必要な基礎学力を有し、探究心旺盛で積極性・主体性に富む人材を受け入れます」というアドミッション・ポリシーもシンプルだが目指す方向がわかりやすくていい。何よりも「グローバル化に向けた入試改革」と称して自ら積極的に変わろうとしている姿勢が素晴らしい。

ただ、今回日経が採り上げた「大学教員による推薦入試」についてだけは異議を唱えたい。もしかしたら大学教員が自分の研究室に欲しいと思うような人材を採るのが双方にとってよいことであるかもしれない。野球のチームにどの選手を加えるか、ということについて監督の意見を重んじるべきであるのと同様に、大学がそこに通う学生を選ぶ際には教員の意見を尊重すべきだ。しかし、あまりに教員1人の影響が大きくなりすぎると公平性という観点からは受け入れにくい。コネで受かる例も出てくるだろうし、そのうち受験生の親と教員の間で金銭の授受があったなんて話が出てきても驚かない。仮にそういったことが全くなく、すべてが健全に行われていても、不合格者のやっかみや周囲の邪推からそういった話は必ず出てくるだろう。そうなればいくら現実には公平な入試制度であっても受験生のやる気を削ぎかねない。

既存のAO・推薦入試でさえ、基準がわかりにくいところがあり、公平性を疑う声が少なからずある。筆記試験のみで決まる一般入試は客観性が高く、公平性という点では大きなアドバンテージがあるが、必要な能力のごく一部しか評価できないという弱点がある。もちろん完璧な入試制度はないが、受験生の能力の正しい評価と公平性の妥協点を探ると主観と客観のバランスが取れた形に落ち着くと思う。今回の筑波大の「大学教員による推薦入試」について詳細はまだ公表されていないが、わざわざそういった入試を採り入れると言うからには、一教員の推薦の影響力は小さくないことが予想され、そうなるとバランスがあまりよくない。もし教員がこれはと思う高校生に出会って自分の大学に来てもらいたいと思ったら一般的な推薦入試を受験するように伝えればいい。

東大、筑波大に限らず多くの大学で入試改革が行われようとしている。そのこと自体はとてもいいことだと思う。試行錯誤しながらもよい入試制度をつくっていくことで、将来の活躍につながる準備をわくわくしながら行う高校生が増えるといい。


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