微妙な信頼関係


クレジットカードの不正使用が増えているという新聞記事を読んだ。大手家電量販店で店員が客のカード情報を盗んで不正使用した、という例もあったという。

クレジットカードは日本でも使用できる場所が増えて日常生活に欠かせないものになりつつある。カード市場は右肩上がりで成長し、経済産業省によれば昨年2013年の取扱高は前年比9%増の40兆3227億円。特にインターネットとの親和性が高く、クレジットカードがなければインターネットの商用利用はここまで普及していなかったかもしれない。サイトに一度カード情報を登録すれば後はIDとパスワードだけで決済ができるというのはとても便利だ。

一方でクレジットカードの利用にはリスクが伴う。便利さと安全性を両立させるのはなかなか難しい。カード番号と有効期限を入力するだけで手軽に買い物ができるということはその情報を盗まれたら他の誰かがそのカードを使って買い物をすることが可能になるということだ。最近は購入時にカードのセキュリティコードを要求することも多くなり、以前と比較して多少は安全性が向上しているのかもしれないが本質的にはあまり変わっていない。カードに書いてある情報を知るだけで他の人が使えるようになってしまう。クレジットカードを店頭で利用するときには当然ながらカードを店員に渡す。冒頭の家電量販店のケースのように悪意のある店員であればその情報を盗むのはいとも簡単だ。

今クレジットカードの仕組みが成り立っていて我々消費者が便利さの恩恵を受けているのはそういった悪意のある人がそこまで多くないからだ。もし悪意のある人が増えればセキュリティをさらに向上させる必要があり、クレジットカード会社または店舗やWebサイト運営者の負担が増え、結果として消費者がそれを負担する。その負担よりも便利さの方が大きいうちはよいが負担の方が大きくなると今何とかうまく回っているクレジットカードの仕組みが成り立たなくなる。

クレジットカードの「クレジット」は元々使用者への信頼を指すが、クレジットカードはそれだけでなく、その一連の処理に関わる様々な人への信頼があって初めて成り立つ仕組みである。クレジットカードの仕組み一つをとっても現在の効率的な社会は我々が思うほど安定的ではなく、微妙な信頼関係によって、かろうじて成り立っていることがわかる。法律や制度で守ることも大事だが、この微妙な信頼関係を保っていくことも同じくらい大事だと思う。


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