美しさを美しいと言わずに伝える


俳句や短歌は美しさを美しいと言わずに表現するものだと学校で教えられた。最初はそれが単なるルールで、本当は「美しい」と言った方が伝わるのに敢えてそれを言わないでそれを伝えるというゲームのようなものだと思っていた。しかし、今では本当の美しさを伝えるために「美しい」と言わない方が伝わるというのもわかる気がする。「美しい」という大雑把な言葉ではなく、よりきめ細やかな表現を使うべきということもあるが、それとは別に、美しさに限らず何らかの感動を伝えたいときには自分の感じたことをそのまま伝えない方がより共感してもらえることがある。

食べ物のおいしさを伝える際も「本当においしい」と言うよりも「あつあつでやわらかい」とか「歯ごたえがある」というような少し客観的な表現を使った方がそのおいしさをより的確に伝えられることがある。いずれも伝え手が感じたことではあるが、伝え手が自分が食べてみて感じたことを伝えようとするのと、その味や食感そのものを伝えようとする、という意思の違いがある。後者の方が、受け手に自分の頭の中でその味や食感を思い描かせて、受け手自身に主体的にそのおいしさを感じさせることができるのかもしれない。

これは美しい、と直接的に言われると受け身でその美しさを感じるようになる。自分の気持ちとしてではなく、「あなた」はそう感じるんですね、ととらえてしまう。こちらでも「あなた」の感じた美しさを理解するためには、自分自身が主観的にそれを美しいと感じる必要がある。「美しい」こと自体を伝えてもらうよりも、同じ情景や状況を的確に伝えてもらう方が結果として、「あなた」が感じた美しさをより深く理解できることがある。

共感してもらおうとするとつい自分の感じたことを前面に押し出してしまいがちになる。自分の感じたことを押しつけるのではなく、一歩退いて客観的に表現することができれば、受け手も自分と同じように感じてくれるかもしれない。そのときは受け手は受け手自身のものとして感じてくれるので共感度合いも深まる。


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