言葉の感覚


「ベールに包まれている」という意味がわかる人でも「ベール」が何のことか知らない人は意外と多いのではないか。ベールという言葉は「ベールに包まれている」という表現のために残っているようなものだ。「ベール」と聞くだけで謎や秘密を想起させる。布に包まれている、ではだめ。絹布でもだめ。ベールでなければいけない。

言葉は柔軟でどんどん変わっていく。枕詞のようにその言葉自体にほとんど意味がなくなっても使われ続けるものもある。何らかの法則に沿って進化しているようにも見えるが、突然変異的な進化の仕方も多い。誰かが新たにインパクトのある言い回しや言葉を使い始めるとそれに引っ張られる形で言葉は進化する。

言葉が法則に囚われずに変遷していく様子はとても興味深いが、それは外国語の学習を難しくする要因でもある。文法を覚えてそこからロジカルに考えて作った文章でも正しくないことがある。言葉は規則よりもリズムの方が重要だ。

母語を覚えるときはいろいろな言葉を覚えながら演繹的に、そして、無意識に文法を理解していく。文法を覚えてから帰納的に言い方を考えるわけでは決してない。ロジックで文章を作るのではなく、読んだり聞いたりして覚えた言い回しを活かして直観的に文章を作る。それに対して、第二言語を覚える際は効率を重視して文法から入ることが多い。そのこと自体は悪いことではないと思う。概念そのものを学びながら習得する母語と異なり、母語の習得によってある程度思考能力を身につけた状態であれば、その能力を活かしてより効率的に言語を学ぶ方法があるはずだ。ある程度以上の年齢になると母語と同様に言語を習得することは難しくなるという側面もある。

しかし、折角母語以外の言語を学ぶのであれば、規則だけでなくその言語特有な感覚も習得したい。そのためには多くの言葉に触れて帰納的に文法を理解していくプロセスが必要だ。文法的には正しいけどそういう言い回しはしない、というようなことを感覚的に理解するためにはある程度インプットの量が必要になる。多くの文章を読んだり聞いたりすること、中でも自分で音読したり実際に話したりしてリズムをつかむことが大事なのではないかと思う。日本語の古文でも漢文でも同じ。声に出してたくさん読むことではじめてその言語の世界を感じることができるようになる。


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