プログラミング必修は必要?


2020年度から小中学校でプログラミングを必修科目にするという動きがあり、政府の新成長戦略にも盛り込まれている。コンピュータに興味を持った子どもが手軽にプログラミングを学べるような環境を整えるのはとてもいいことだと思う一方で小中学校ですべての子どもに一律のカリキュラムでプログラミングを学ばせる必要性はあまり感じない。

コンピュータに関連する技術は第二次世界大戦前後から急速に進歩し続けていて、20世紀末から21世紀初頭にかけてのインターネットの爆発的な普及も経て、今後もITの発展の勢いはとどまりそうにない。製造、小売り、運輸、金融にとどまらず、あらゆる産業の商品やサービスの質を高めるのにIT技術は不可欠で、AIの技術も発展する中、ITに頼る部分は今後ますます大きくなるだろう。こういう状況なので日本の産業の競争力を高めるためにITに強い人材を多く育てることが大事だということに異論はない。GoogleやFacebookのようなIT企業が出てくれば素晴らしいし、他の業種でもテクノロジーを最大限に活用して高い付加価値を出す企業が増えれば日本はより豊かな国になる。疑問なのは、プログラミングの必修化がITに強い人材の輩出にどれだけつながるのかというところだ。

「プログラミング」の授業で具体的にどのようなことをしようとしているのか、どのくらいの授業時間を割こうとしているのか、詳しいことはわからない。すべての人に最低限のITスキルを身に着けさせようとしているのか、すべての人にITに触れさせることで多少でもコンピュータを知る人の母数を増やし結果としてITに強い人材を輩出しようとしているのか。いずれの目的についても「必修化」によって一定の効果はあるだろうが、前者であれば普段の生活の中で身に着けられるもので十分だと思うし、後者であれば他に優先すべきことがある。

仮にプログラミングという目的に限ったとしても小中学生の限られた授業時間の中では普遍的な「考える力」を養ったほうがいい。早いうちからプログラミングの表面的な知識を学ぶより、国語や算数・数学を学習して論理的な思考を鍛えておく方が技術者としても将来伸びるように思う。特に数学はプログラミングと親和性が高く、プログラミングをするのに必要なロジックは数学を学んでいれば大体身に付く。国語や算数・数学は長年教え続けられていることもあり現場に知見も蓄積されている。これからわざわざプログラミングを必修化して教員の確保やトレーニングにコストをかける必要性を感じない。

国の方針で義務教育の内容を管理するのは必要なことだしある程度までは悪いことではない。ただ英語を必修にしたり、プログラミングを必修にしたり、普遍的な力とは違うところまで管理しようとするのは少し気持ち悪い。管理しようとするのではなく、興味を持った子どもが自発的に楽しめるような環境を整えておく方がいい。たとえば放課後に学校の教室を開放して子どもがコンピュータを自由に使えるようにしておくだけでもだいぶ違うと思う。


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