ジェフリー・アーチャー張りの工夫


イギリスの作家のジェフリー・アーチャーの小説が好きで今まで出版されたものはすべて読んでいる。2月にクリフトン年代記というシリーズの6巻目「Cometh the Hour」が発売されてAmazonのKindleで読んだ。翻訳されるのを待てずに原書を読むようになったがペーパーバックが出るのも待てずKindleで読むようになった。クリフトン年代記は1年に1冊のペースで出版されているので約1年ぶりにクリフトン家の世界に戻ったことになる。読み始めるときは誰だっけ?というようになる登場人物もいるのだが読み進めていくうちに完全に思い出し、またどっぷりとクリフトン家の世界に浸ることになる。

1年ぶりに読んでもスムーズにその世界に入っていけるのは作家の巧妙な仕掛けによる。しばらく登場していなかった人物が再度出てくる際にはさり気なく説明が厚くなっていたりする。覚えていることを長々と説明されるのはまどろっこしいが、忘れかけていることを再度説明してくれることは有り難い。その辺りのさじ加減が絶妙だ。

1巻から6巻まで続けて読む人もいれば1年おきに1巻ずつ読む人もいる。記憶力のいい人もいればそれほどでもない人もいる。いずれの場合でも面白く読ませなくてはならないから作者も大変だ。さらにシリーズ物では、最新巻だけを読んでも楽しめる、という工夫も必要になる。初めてクリフトン家のことを知る人でも楽しめるようにしなくてはならない。

その世界を知らない人を引き込むための工夫は小説だけでなく映画でも、漫画でも、ゲームでも施されている。スターウォーズのように40年近くに亘って展開されているシリーズだと昨年公開されたエピソード7で初めてその世界観を知った、という人も少なくないはずだ。すべてのシリーズを見てきた人も、エピソード7が初めての人も楽しめるように考えられている。

このような工夫が学習教材にもあるといい。様々な知識レベルの人を引き込むような内容の教材が増えれば勉強に夢中になる子どもが増える。ある分野の「勉強」が面白くないと思う人がいればそれはその世界の面白さがわかるまでの道がスムーズでないからだと思う。学びに携わる仕事をするからにはジェフリー・アーチャー張りに学習者を引き込むための仕掛けを考えていきたい。


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