押してダメでもなお押す


今年の3月に引退した元横綱の鶴竜親方は現役時代、相撲の中での「引き癖」で有名だった。もちろん横綱になるくらいだし、幕内の優勝も6回とその実力に疑いの余地はないのだが、そのまま押せば勝てそうな相撲でもなぜか引き技を出して、挙句の果てに負けてしまう、いう相撲が何度もあった。引くそぶりなど見せていない場面からNHKの実況アナウンサーが「鶴竜ここで引いてはいけない、引いてはだめだ」と繰り返し、その後やっぱり引いて負けてしまったときに「鶴竜今日も引いてしまったー」と残念そうに言っているのは横綱に対するコメントとしてはちょっと可笑しかった。本人も自覚していただろうし、相当な稽古も積んでいたと思うが、それでも直らなかったのは「押してダメなら引いてみろ」の感覚が体に染みついていたのだろうか。

この「押してダメなら引いてみろ」の感覚の弊害は中学生や高校生を見ていても時折感じることがある。やりたいことがあってそれを進めている中でちょっとした壁に当たると、そこですぐに方向を変えてしまう。そのままもっと押していけば十分倒せる壁であっても諦めて別の方向を考えようとする。もちろんいろいろな道があるし、当初考えていたことが自分にとってベストだとは限らないので、他の道を選ぶこと自体は悪いことではない。ただ、どの道を選んでも結局遅かれ早かれ壁にぶつかるし、それを避けて別の道を選んでばかりいると結局どこにも進めなくなってしまう。それであれば、最初に選んだ道でもう少し頑張って先に進んでから改めて考えるのでもよいのではと思うのだ。引き技がだめなのではなく、その前に十分に押すところまでいっていないことが問題だ。押して押してだめでも、それでもなお押して、本当にこれ以上は如何ともし難い、というところまで至って初めて引き技を出せば、それは有効に決まる可能性が高くなる。先が見えない中、このまま押し続けていいのか、と不安になるのは理解できるし、方向転換するタイミングは常に難しいが、「押してダメなら引いてみろ」は最後の最後の手段で、そこまでは「押してダメなら、もっと押してみろ」で行ってもいい。


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