生涯追い求める


ベートーベンの交響曲第9番は彼の作った数多くの楽曲の中でも最高傑作と称されることが少なくない(私を含めて人類史上の最高傑作と考える人もそれなりにいると思う)。ベートーベンは1827年56歳で生涯を閉じたが第9が完成し初演されたのは亡くなる3年前の1824年、53歳のときだ。それまでも数々の名曲を生み出してきたが一生を通してよりよい音楽を求め続けていたのだろう。聴覚障害だけでなく様々な病気に苦しむ人生で順風満帆というわけではなかったが最後まで究極の音楽を追求し続けた執念が伝わる。

ベートーベンより14歳年上のモーツァルトも短い人生の晩年に作曲した交響曲の評価が高い。特に第40番、第41番はそれまでの優雅な宮廷音楽とは一味違う陰のようなものを感じさせ味わい深い。モーツァルトが急に大人になって真面目に作曲に取り組んだかのような気さえする。ずぶの素人の意見で恐縮だがマーラーも20世紀に入ってから完成させた最後の交響曲第9番、ショスタコーヴィチも60歳を超えてから完成させた最後の交響曲第15番が最も完成度が高いように思う。

いずれも歴史に残る偉大な作曲家たちでベートーベンやモーツァルトは200年、マーラーは100年、ショスタコーヴィチでも50年以上世界でその楽曲が聴かれ続けているわけで、そういった作品群を遺してきたことがすばらしいし、それだけで彼らの人生が多くの人が羨むような価値のあるものだったと言えるかもしれない。でも仮に彼らの作品が人類にとって不幸なことにどこかに埋もれて現代まで残っていなかったとしても彼らが生涯追求したことの価値は変わらないようにも思う。自身の病気や社会の体制に苦しみながらもよりよい作品を晩年まで追い続けたこと自体が一つの人生を生き切った感じがしていいなと思う。

世の中には若くして頂点を極めるアスリートや世界的な成功を収める起業家もいて、それはそれですばらしいと思いつつ、生涯に亘って最高傑作を追い求め続けることは、それが何らかの形にならなかったとしても、それ自体が(苦しいかもしれないけれど)幸せなことなのではと思う。


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