自然科学を愉しむ


人間の直観は自分自身の経験と学習によって徐々に具わるものだ。自分の手が自分の意志によって動くことを知ったり、目から入る視覚の情報から個々の物を認識したりするところから始まり、様々な物を見たり、触ったり、そのものの音を聞いたり、匂いを嗅いだりする中で、外界にある物について理解を深めていく。目に見える物がどのような物なのか、硬さであったり、重さであったり、表面の触り心地であったり、初めて見る物であってもある程度想像できるように思うのは、それまでいろいろな物を持ったり触ったりした経験があるからだ。音や匂いから外で何が起きているのかをある程度推測することができるのもそれまでの自身の経験に基づいている。五感を使って入手する外界の情報を蓄積し整理することで自分の周りの世界を理解し、同時にその世界で通じる直観を身につけていく。

ただ、その直観は自分自身の経験と学習に基づくものであるため自分視点のものになりがちで、自分の周辺の世界を超えてまでは働かない。たとえば、地球が太陽の周りを秒速30kmつまり時速108,000kmで回っていることを直観的に見抜くことはなかなかできない。世界を客観的に捉えるためには(そうしたことが果たして人間に可能なことなのかどうかは不明だが)、直観に頼らずゼロベースで考える必要がある。これまでの自然科学の発展をみると少なくともある程度まで人間は自分の直観と切り離して世界を捉えることができるようだ。コペルニクス、ガリレオ、ニュートンによって打ち立てられた新しい理論は人間の存在とは関係なく宇宙にあるすべてのものが一定の法則によって動くことを示した。それは日常的に人間が感じてきた世界とは異なる世界像を提示し、自分視点ではない世界の見方を促した。アインシュタインに至っては空間や時間が一様でない世界を示し、人間が地球上での生活を通して持つようになった絶対的な空間と時間のイメージとは大きく異なる宇宙観を促した。

新しい理論は直観を裏切り常識を覆すが、一方で人をわくわくさせるところがあるのは真理を追究したい気持ちが人間に備わっているからだろうか。むしろ、それまでの直観を裏切られるところに自然科学を学ぶことの喜びがあるのかもしれない。自然法則に従って誕生した人間自身がその世界の原理をどこまで追究できるのかはわからないが、この500年の自然科学の急速な発展を見るとまだまだ革命的な新しい世界の捉え方を提示する科学者が出てくるのではないかと期待してしまう。20世紀の物理学者の理論も難解でなかなかついていけないが、自分の直観に囚われずに自然科学の学びを愉しみたい。


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