見せる党首選び
日本も大統領制を取るべきだとは必ずしも思わないが米国の大統領選のプロセスのメリットは参考にできるところがあるのではと思う。最大のメリットは国民の注目を最大限集められることだ。トランプ対クリントンで行われた3回のテレビ討論会は1回目が8000万人以上、2回目、3回目も6000万人以上もの人が視聴した。
二大政党である共和党、民主党の各指名候補によるテレビ討論会は大統領選挙の長いプロセスの最終局面で行われるがそこに至るまでのプロセスも洗練されている。立候補の表明は最終投票日の2年くらい前から始まる。今回もクリントン氏は2015年4月、トランプ氏は2015年6月に立候補を表明した。そこから選挙運動を開始してまずは各党の指名を目指すのだが、そのプロセスが長い。さながらメジャーリーグのペナントレースのようだ。各党の候補同士が何度もテレビ討論を繰り返す。共和党、民主党の指名を決める予備選挙は大統領選挙の年の1月か2月くらいから始まるが立候補の表明はしたものの支持者を十分に集めることができず予備選挙が始まる前に撤退する候補も少なくない。主要候補として予備選挙に名乗りを上げることができる候補はペナントレースを勝ち抜いてプレーオフの出場権を得たようなものだ。その予備選挙がまた長い。50ある州ごとに行われるので毎週のように選挙または党員集会が行われる。今年の民主党の予備選挙は2月1日のアイオワ州の党員集会を皮切りに、6月までかけて行われた。予備選挙で大方、決着がつくと、指名候補は7月に副大統領候補を発表し、党の全国大会で正式指名を受け、いよいよワールドシリーズに匹敵する最後の決戦に突入する。
誰が立候補するかというところから予備選を経て本選に至るまで2年ほどの間、報道がされ続ける。本選で大統領が選ばれた後も主要閣僚人事に注目が集まり、また就任後もしばらくは新大統領の動向が逐一報道される。それが4年ごとに繰り返されるので結局いつでも政治についての話題に事欠かない。50の州の集合体である合衆国の大統領を民主的に決めるために徐々にできた制度だがメディアを通して有権者にわかりやすく見せるということも意識されているように思う。映画やスポーツのエンターテインメント産業が発展した米国ならではの洗練された仕組みと言える。
米国の共和党、民主党の大統領指名候補選びと日本の自民党や民進党の党首選びとでは意味合いが全く異なるが、選考プロセスの期間を長く、かつ、オープンにして、一度、選んだらしばらく変えないようにすると日本の政党の党首選びも今より国民の注目を集めることができるのではないかと思う。そうなれば、日本でも学校の授業より面白く、そして真剣に政治について学ぶ機会になる。
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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。