退屈よりペンキ塗り


マーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」の中に有名なペンキ塗りの話がある。塀のペンキ塗りを仕事として言いつけられたトム・ソーヤーが最初は仕方なく嫌々やるのだが、友達が通りかかった際にさも楽しそうにやるのを見せつけて、しかも友達が自分にもやらせてくれ、というのを敢えて断ることで焦らし、最後はりんごをもらってやっと仕事を譲る。トム・ソーヤーは嫌な仕事を逃れ、友達が代わりに仕事をするのをりんごを食べながら寝そべって見る、という話で、してやったりな感じなのだが、よく考えてみるとペンキを塗る方がいいのか、寝そべって見ている方がいいのか、どちらがいいかは意外と難しい。

中学高校の定期テストで、特に自分ができないときに多かったのだが、試験時間を持て余すことがよくあった。国語とか数学とかであればまだ考えることがあるので時間が余ることはあまりなかったが知識を試されるような問題ばかりの50分の試験で20分くらいで自分の知識をすべて出し切り、残りのわからない問題は自分の頭に答えがないことがわかっている、というときの残りの30分はとても苦痛に感じた。途中退席が許されず、話もできず、本も読めず、じっとしていなければいけない。後には解きかけの覆面算を記憶しておいて問題用紙の余白で解いてみるなどその時間の使い方を工夫するようになったが、もし退出していい代わりにペンキ塗りの仕事をする、という選択肢があったならば喜んで選んでいただろう。

仕事ばかりしていると寝そべって何もしないことが魅力的に見えてくるが寝そべってばかりで何もしていないのはそれはそれで苦痛だ。眠くないのに昼寝を強要させられるのとペンキ塗りを強要させられるのとどちらが苦痛だろうか。

仕事のやりがいは誰かのために役立ったり、人に喜んでもらったり、社会に対して何らかいい影響を与えたり、するところにある。ただ、もっと根本的なところで何か作ったり、改善したり、整理したり、するという作業自体が楽しい、というところもある。仮にトム・ソーヤーの策略を見抜いていたとしてもりんごを渡してでもペンキを塗りたくなるときがある。


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