長期的視点


石原慎太郎氏が田中角栄の生涯を1人称で書いた小説「天才」が累積売上65万部を超えて今年上半期のベストセラーになった。書店に行けば田中角栄関連本がたくさん並び、一種のブームになっている。金権政治と揶揄されることもあったが首相を退任してから40年以上、死去してから20年以上経った今、評価が見直されている。

江戸時代の絵師・伊藤若冲の生誕300年を記念して4月から5月にかけて東京都美術館で開催された展覧会は1か月で44万人もの入場者を集めた。若冲は生前から名高い絵師だったそうだが2000年に京都国立博物館で大規模な若冲展が開かれるまでは知る人ぞ知る存在だった。それが京都での展覧会以降じわじわとファンを増やしこちらも今やブームと言っていいほどになっている。東京都美術館での展覧会では行列で5時間待ちのときもあったという。

死後何十年も経ってから(若冲の場合は死後200年以上も経ってから)、時代背景によって人々の考え方が変わるせいか、同じ人物(あるいはその作品)に対する評価が変わっていくのは興味深い。足利尊氏や楠木正成のように死後700年以上経っても評価が変わり続けて定まらないケースもある。死後認められても仕方ないと思う考え方もあるかもしれないがどんなに時間が経っていても改めて評価し直されるかもしれないという想像は今生きている人に影響を与える。

死後何年経つかわからないにしてもいつか適切な評価が下されると思えば、長期的な視点でやるべきことをやろうと思うようになるかもしれない。たとえ、そのときに周囲の支持を得られなくても(政治家であれば一時的に支持率が下がるとしても)、時間が経てばきっと理解を得られると信じることができれば、多少の困難があっても実現するための意欲が湧く。

日本銀行の金融政策決定会合はその完全な議事録が10年後に公開される。米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は5年後、欧州中央銀行(ECB)の政策理事会は30年後に議事録を公開するようになっている。この時間差での情報開示のあり方は、政策決定時の自由な議論を担保した上で、長期的にはメンバーの責任を明確にできる、とてもいい仕組みだと思う。

我々のような一般人の行った仕事が死後評価される可能性はあまりないし、公開されるような議事録があるわけでもない。それでも、自分のやってきたことが将来すべて明らかになることを想像してみれば、自分の仕事により大きな責任を感じ、長期的視点でやるべきことをやっていこうとするモチベーションが湧く。


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