民意の反映 2
大方の予想を覆して英国民が国民投票によってEU離脱を決めた。1人1票でこれ以上ない民意の反映のはずなのになぜか国民全体の意向が反映されていないように感じるのは私自身が英国のEUへの残留を希望していたからだろうか。
賛成、反対意見が分かれる中で、皆が納得のいく結論を導くのはどの道極めて難しい。しかしやり方によって納得感をある程度高めることはできる。今回の英国のEU離脱・残留については十分に議論された上での結果だとは思うが、残留派に納得感はあっただろうか?離脱派には残留派を説得できた感触があっただろうか?互いに意見が異なったままほんの数パーセント、どちらかの数が上回ったからといってそれを最終的な結論としてよいのだろうか?
1人1人が平等であるべきという原則に異論を挟むつもりは全くないが、1回行った投票の結果が1741万票と1614万票だったからといって、単純に「1741万票>1614万票、よって、1741万票の方が民意」とするのは、明快ではあるが少し乱暴な感じがする。第二次世界大戦の反省から平和を目指して徐々に形作られてきたヨーロッパの共同体に英国が1973年に加盟してから40年以上経っている。英国内で長いこと不満が燻っていたとはいえ重大な決断を「軽く」下してしまった印象が残る。
両サイドが拮抗すればするほど負けた方は納得しにくい。綱引きのようにどちらか一方にもう少し振れた段階で、たとえば60%の得票率を得られたら、初めて投票結果を有効にするというような仕組みがあってもいい。あるいは米国大統領選のように時間をかけて議論するプロセスがあれば双方にもう少し納得感があったかもしれない。2015年の総選挙でEU離脱・残留についての国民投票の実施を公約し、今回それを実現し、その結果、自身の目指す残留が叶わず、翌日には辞任を発表したキャメロン首相は潔いとも言えるかもしれないが、もう少し泥臭くやる方法があったのではないかと思う。
報道によれば、下院が設置しているインターネットの請願サイトに再投票を求める人の署名が200万人以上集まり、下院の特別委員会で取り上げることになったという。結果に納得がいかない人が多い証拠だろう。
多数決のメリット・デメリットについてはこれまで議論し尽されていることではあるが重要な議題を数%の数の差で決断してしまう英国国民の投票結果を実際に見て、改めてそのリスクを実感するとともに、単純明快とはいかない間接民主制のよさを見直す機会にもなった。
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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。