大学入試制度改革について 2


文部科学省の中央教育審議会(中教審)で大学入試制度改革の議論が順調に進んでいる。計画通りに改革が進めば、今の中学1年生は5年後、センター試験の代わりに「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を受けることになる。この新しい学力評価テストと各大学が行う個別選抜によって合否が決まる。個別選抜は「小論文、プレゼンテーション、集団討論、面接、推薦書、調査書、資格試験等」で行うことが想定されている。

どのような形で大学受験を実施するかは入学してくる学生の質に直結する重要事項であり、まともな大学であれば何も言われなくても今の社会で活躍するポテンシャルの高い学生をどのように選抜するか熟慮するだろう。そういう意味では国主導で枠組みを決めるよりも各大学に自由に選抜方法を検討してもらう方がうまくいく気もするが1点刻みのペーパーテストから多元的な評価へという改善の方向性はよいと思う。

文部科学省主導の改革で心配なのは「多元的な評価」が形だけのものになってしまう可能性だ。プレゼンテーションや集団討論といった試験の導入は基本的に賛成だが導入するからには正しく評価をしなければいけない。そのためには形を採り入れるだけでなく評価できる態勢を整えなければいけない。現在ほとんどの大学で受験生の評価を教員が行っているが合否の判断も含めて専門的に評価を行うアドミッションズオフィスの設置を検討してもよいかもしれない。

これは中教審の報告書にも触れられているが「多元的な評価」が進むと大学のアドミッションポリシーの重要度が増す。絶対的な評価の基準がなくなるため評価の拠り所を各大学で決める必要があるからだ。現在もAO推薦入試を実施している大学のほとんどでアドミッションポリシーが定められている。しかし、「グローバルに活躍する」「社会でリーダーになる」といった抽象度が高い内容で各大学の個性が感じられないことが多い。理想が高いのは悪いことではないが、その大学を選んでもらうためには、ポジションを取って独自のアドミッションポリシーを掲げることが必要になる。さらに大事なのはアドミッションポリシーに合わせて入試の内容を決定することだ。今のAO推薦入試においてもアドミッションポリシーで立派なことを言っているのに入試の内容でそういった力を見ているとは思えないということが少なくない。アドミッションポリシーでたとえばリーダーシップを掲げるからには入試でリーダーシップを評価しなければいけない。もうひとつ必要なのは入学後の学生の評価の方法も入試に合わせて検討することだ。学力よりもリーダーシップを重要視して入試もそのような形で行ったのであれば入学後の追跡調査においても学業成績よりもリーダーシップに重点をおいて評価すべきだ。あるいは学業成績にリーダーシップの評価が含まれるようにするのでもよい。アドミッションポリシー(目標)、入試(手段)、追跡調査(チェック)の整合性が取れていれば、その大学が望む学生を採りやすくなり、入試の有効性のチェックをして改善するという仕組みも作りやすい。

中教審の改革スケジュール案では大学毎の個別選抜について今年度(2015年度)より「個別大学において検討、周知も含めて可能なものから随時実施」としてある。また「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」についても今年度フィージビリティ検証が始まり再来年度(2017年度)には実施内容の詳細が決定されることになっている。改革の方向性、スピード感はよいと思うが、意図通りの入試が実現できるか、形だけのものになってしまわないか、見守っていく必要がある。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。