本物と本物に似て非なるもの


本物と本物に似て非なるものを区別するのは時として簡単ではない。

企業が提供するモノやサービスには「本物」と「本物に似て非なるもの」が混在している。長い目で見れば、「本物に似て非なるもの」は淘汰されるが、新しい「似て非なるもの」が常に出てくるので消費者は判断を誤りがちだ。自動車でもコンピュータでもスペックがほぼ同様で見た目が同じようでも、見えない部分が大きく異なることがある。乗り心地であったり、キーの打ちやすさであったり、長時間使ってみて初めてわかるような違いがある。サービス業においても一見同じような内容を謳うサービスでも質が全く違うということはよくある。むしろ数値で表すことの難しいサービス業の方が、「似て非なるもの」は出現しやすい。

仕事柄、学習教材をチェックすることが多いが、教材にも「本物に似て非なるもの」が数多くある。たとえば試験向け教材。タイトルをつけるのは簡単なので、「東大対策」「センター試験対策」「TOEIC対策」と銘打った教材を出すのは容易にできる。問題の形式を似せてそれっぽい問題集を作ることも難しくない。しかし、それぞれの試験の本質を知った上で、その対策のための教材を作ることは簡単ではないし、それができている教材はほんの一握りだ。多くの参考書や問題集は形だけ本物っぽくきれいに揃えているが本質的ではない内容や問題で埋められている。大学受験対策でも資格試験対策でも過去問や問題を作成している機関が提供するオフィシャル問題集を超える教材はほとんどない。同様のことは教材だけでなく本についても言える。それっぽいタイトルをつけて、それっぽい構成ではあるが中身がほとんどない本はたくさんある。

試験に関していえば試験を課す側の大学においても欲しい学生像を明確に定義し、そういう学生をとるために自ら工夫して、「本物」の試験を課す大学と、そういった大学の試験の形式だけを真似して、形はほとんど同じなのに、評価がまともにできていないような大学が存在する。

真似が悪いわけはない。アップル社のMac OSを真似たマイクロソフト社のWindowsは「本物に似て非なるもの」から改良を重ねて「本物」になった。よくないのは「本物」の形式だけを真似て、そこで満足して中途半端な存在のモノやサービスを提供することだ。

消費者としては、本質を見極める努力を続け、似て非なるものをつかまされない努力を続けたい。一方で、経営者としては、常に本質を追究し、「本物」だけを提供するように細心の注意を払いたい。「本物」を提供できない企業は生き残ることができない。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。