バリュー投資


投資家として一代で8兆円もの資産を築いたウォーレン・バフェット氏は株式が本来持っている価値と価格との差を見極めて行う投資で知られている。株式の価格は日々変化するがその企業の価値自体が大きく変わるわけではなく、価値よりも価格が低いときに買い、価値よりも価格が高いときに売る。当たり前の戦略のようではあるが簡単ではない。まず本来持っている価値を見極めることが難しい。現状の資産価値や今後の収益予想から価値を判断することになるが、1年先ならまだしも2年後、3年後、さらにその先の収益を精確に予想することは不可能に近いし、予想した収益から現在の価値を判断することも簡単ではない。仮にある程度の確度で本来の価値を見極めることができたとしてその自分の判断を信じて周りの人とは違う動きをするというのも簡単にできることではない。株式の暴落の後、安値で買い占めて大儲けした、という話を聞くと何だか簡単にできそうな気もするが、まさに今暴落して皆が売り払おうとしているときは、底なしに落ちるところまで落ちる気がするものだ。そこで自分だけ周りとは違う行動を取ることはとても勇気がいる。さらに難しいのは価値判断が正しかったかどうかは時間が経ってもわからないことだ。株価が長期的に正しい価値を表す価格に集約されるという保証はないし企業の価値自体も全く不変のものではないから結局いつまで経ってもそのときの判断が正しかったどうかはわからない。

それでも周りに流されず自分の価値基準を基に判断することのメリットは大きい。バフェット氏のような的確な判断はできなくても日々の変化に惑わされずに冷静な判断ができれば、株価が上がった後の飛びつき買いや株価が下がった後の狼狽売りも避けられる。少なくとも自分で考える価値より高い価格で買うこともないし、低い価格で売ることもない。

自分にとっての価値で判断すべきなのは株式の売買だけではない。むしろ、金銭的価値だけでない多様な価値を持つ他のことについての方が一層、市場の評価よりも自分の価値観を重んじるべきだ。たとえば大学の評価。いわば偏差値が市場による評価のようなものだが皆が行きたがる学校が必ずしもいい学校とは限らない。その大学学部がいいかどうかは世間の評価ではなくやはり自分で判断すべきだ。バフェット氏張りの卓見があれば今偏差値が低くても自分にとって価値の高い大学学部を見つけられるかもしれない。

自分自身のことを振り返ると大学を選ぶ際、大学入学後に学部学科を選ぶ際、就職する際、大学院に留学する際、それなりに自分自身の価値基準を大切にしてきたつもりはあるが、それでも必要以上に周囲や世の中の評価を気にしていたように思う。そこまで確かな判断材料を持っていなかったこともあり仕方のなかった面はあるが、自分で価値を見極めようと思いをもっと強く持っていてもよかった。

2020年度の入試改革もあり大学入試の多様化が進むが、受験生側もそれぞれが独自の基準で大学学部を選択することで大学選びの多様化が進むといい。