モスクワ!


先週、洋々の説明会を開催するためモスクワに行ってきた。隣国でありながらロシアに行くのは今回が初めてだった。

小学生の頃、ソビエト連邦といえば何か得体の知れない恐ろしい国というイメージがあった。正義の国アメリカと対立し日本に対しても核兵器を向けているどちらかというと「悪」の国のイメージがあった。日本の歴史を少し齧った後は第二次世界大戦の最終段階で不可侵条約を一方的に破って日本の領土を奪った国としてネガティブなイメージが増した。

ゴルバチョフ書記長がグラスノスチ(情報公開)、ペレストロイカを進めたときは、何となく、いい方向に向かっているのではと思った。「悪」の国が目覚めてようやく「いい」国になろうとしているという感覚があった。「普通」の先進国の1つになるのではと思った。

しかし、今振り返ってみるとソ連へのネガティブなイメージもゴルバチョフ時代の変革に対する期待感も西側に住んでいたがために持ったもので、当然ロシア国民の感覚とは大きく異なる。実際、ゴルバチョフ氏は日米欧での人気が高いが、ロシアでは未だに評価が低い。市場開放も民主化も必ずしも万人が望むわけではない。先進国に住む人がロシアにとってよいと考えることがロシアに住む人が望むこととは限らない。

今日ではバルト三国など元々ソ連に属していた国もEUやNATOに加わったりして、西側と東側という単純な分け方は難しくなっている。しかし、日本を含む元々の西側諸国とロシアの間には今でも明確な溝があり、西側のマスコミが伝えるロシアの様子からは何か独裁的でダークな感じを受けることが多い。CIAの情報をリークし、現在逃亡中(香港経由でモスクワに滞在中)のアメリカ人、エドワード・スノーデン氏についての最近の報道をみても、米国の引き渡し要求に応じないロシアが何か正しいことを邪魔する存在であるかのようにみえる。しかし、欧米や日本の論理とロシアの論理は異なる。先進国と呼ばれる国に住んでいるとこちらが進んでいてロシアや中国のような国が発展途上であるかのように感じるが必ずしもそうではない。ロシアの発展のゴールは欧米とは異なる。

今回、たった数日間ではあるがモスクワを訪れて初めて自分の目でロシアを見ることができた。モスクワ中心部の数々の壮大な建築物やクレムリンの中にある武器庫(宝物庫のようなところ)をみると大国の威厳を感じる。一方で街の様子は普通の先進国と変わらず、普通だなと思ったことで却ってそれまでの自分の見方にもやはり偏りがあったことを感じた。ロシアはチャイコフスキー、ラフマニノフ、ストラヴィンスキー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチという偉大な作曲家やドストエフスキー、トルストイという世界的文豪を生んだ文化的素養のとても高い国である。資源が豊富で教育水準も高い。日本とロシアの間には依然として北方領土の問題が横たわるが、お互いの論理を尊重することができればお互いに尊敬し合ういい関係を築くことができると思う。洋々でもいつかロシアの地で本格的にサービスを提供していきたいと考えている。


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