適当


「適当」という言葉は面白い。

もともと「条件・目的に合致する」の意味だったはずで、今普通に使われている「いい加減」の意味はなかったと思う。もともとは偉い人が「よきにはからえ」みたいな感じであなたの判断で適切な処置をしてくださいというような意味で「適当にやってくれたまえ」とか使っていて、言われた方も「はい、適当に対処いたします。」みたいな感じで真面目にやっていたのだと思う。それが、だんだん上司が面倒くさいときに「テキトーにやっておいて」と使うようになって、部下の方も「テキトー」にやっておけばいいや、という感じで意味が変わってきたのではないだろうか。

「テキトー」というようにカタカナで書いてしまうと最早、今の日本人には本来の「条件・目的に合致する」という意味はほとんど思い浮かばない。今では、「そんなのテキトーにやっておけばいいんじゃない?」という感じで、若い世代では、「いい加減」の意味で使う方が普通だろう。試験問題によくある「適当なものを選べ」といった設問にも違和感を感じる人がいるかもしれない。そもそも「いい加減」も、本来は、「適度」という意味でしか使われていなかったのが、適当と同じような経緯でネガティブな意味で使われるようになったのではないか。

「適当」の意味の変遷は、組織のマネジメントを考える上で興味深い。組織のマネージャーは部下のやっている仕事について必ずしも部下より知っているわけではない。むしろ、直接その仕事に関わっている部下の方がその仕事についてよく知っている場合が多い。そこでマネージャーはついついその仕事をよく理解しないまま、「よきにはからえ」的な指示を出してしまいがちだ。もちろんマネージャーがすべての仕事において部下より知っていたり、優れていたりしなければならないわけではない。それでは逆に組織としてのレバレッジを効かせることができないだろう。しかし、そうはいっても何も知らずに「よきにはからえ」というのも違う。マネージャーがある程度自由に仕事を部下に任せることは部下のモチベーションを上げるために必要だが、少なくとも部下の仕事内容を十分理解した上でなければ適切な指示や評価ができない。いつでも何でも「よきにはからえ」だと、どんな言葉を使って言っても、いい加減・テキトーに言っているとそのうち部下に思われてしまう。


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