なってみると


もう秋分だというのに数日前油蝉の鳴き声を聞いた。残暑が続くために地上に出てきてしまうのだろうか?考えてみると蝉の幼虫があるタイミングで土の中から出てきてさらにもともと自分の体だった殻を破って外界に飛んでいくというのはなかなか理解しがたい。今までずっと地中にいたのにある日突然むずむずして外に出たくなるのだろうか?

現代を生きる人間は生まれてから大人になるまでに多くのことを親や学校の先生、あるいは、友人から明示的に学ぶ。だから逆にそういう学ぶ機会がなければ何もわからなかったのではないかと思ってしまう。それで、親から地上への出方や飛び方を習ったわけではないはずの蝉の幼虫がある時期になると自分の力で外に出て自分の力で飛んでいくことを不思議に感じる。しかし、実際には人間においても明示的に習わなくても時期がきたらできるようになることはいろいろある。

星新一のショートショートの中で印象的で今でもよく思い出す話の一つに次のようなものがある。

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街を歩いている人が突然ポケットから何か小さいものを取り出すとそれが膨らんで乗り物になり、それに乗って飛んで行ってしまう。驚いてそのことを他の人に伝えようとするとその人も無言のまま同じようにして飛んで行ってしまう。それを何度か繰り返すと、今度は別の人が驚いた顔をして自分に何かを伝えようとしてくる。すると今度は自分がポケットに何かを感じ、それを取り出すと乗り物になり、そのまま無言でそれに乗って飛んでいってしまう。
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なぜこの話が印象的かというと、難しいと思っていたことでもその立場になってやってみると意外と自然にできてしまうということが往々にしてあるからだ。自分では無理だと思っていたことでも適切な時期がくると自然にできることがある。

小学生のときに想像していた中学生生活、高校生の時に想像していた大学生活、大学生のときに想像していた社会人の生活。想定通りであることはまれだが、なってみるとそれなりに振る舞うようになる。

時期がくれば自然にできるようになることがあるからといって、今やることが難しいことの準備を怠っていいわけではないが、自分が地上に出て飛ぶことは無理だと思ってあきらめる必要もない。蝉の幼虫のように今すべきことを淡々と行っていれば、いつの間にか地上に出て飛ぶ準備ができているかもしれない。


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