環境と自分のペース


マラソンランナーはなぜ集団を作って走るのか?マラソンにおいては、たとえばポジション取りが重要な自転車競技と比較して、直接相手に干渉できる要素があまりない。ということは他の選手の動向にかかわらず自分が最も速いタイムを出せるペースで走るのが一番よいのではないか?自分にとってベストなペースというのが存在してそのペースを守るのが集団で走っても一人で走っても最も早く走れるのではないか?ハイペースの方が実力を発揮できる人もいればスローペースを好む人もいるだろう。実力的にもそのペースだと少し楽な人と少しきついひとがいるはずだ。それなのになぜ集団で走ろうとするのだろうか?

研究者の世界でも似たようなことがある。トップを走る研究者間の競争は熾烈だがお互いの動向を注意深く見守りながら同じようなペースで研究を進める。ノーベル賞級の発見を複数のグループが追い求め、同じようなタイミングでゴールにたどり着く。企業の新製品開発も同様で、競合に先を越されないように鎬を削りながら、それぞれ似たような新しい製品を同じ時期に発売したりする。

以前の記事でも書いたが競争がモチベーションアップのために絶対必要とは思わない。しかし、周りの環境が自分のペースに大きく影響を与えることは間違いない。競争に勝ちたいと思う気持ちも大事かもしれないが、それ以上に、そのペースで進んでいくことが当たり前と感じるようになることが大事なのではないか。

自分が走るスピードや研究に集中できる時間は心の持ち方によっても大きく変わる。だから、自分の力の潜在的な限界を知ることは難しいし、そのときの条件において、どのスピードで走るのがよいか、あるいは、1日何時間研究に費やすのがよいか、ということを知るのも難しい。毎日3時間勉強するのが多いのか少ないのか絶対的な基準はない。それが多いか少ないかは相対的なもので、普通は自分の周りにいる人と比較してどうかという話になる。たった3時間しか勉強していないのか、と思われるような環境もあるし、毎日3時間も勉強するの?と思われる環境もある。環境によって自分の意識も変わる。自分の本来の能力に関わらず、3時間の勉強を簡単なことと認識することもあれば、大きな負担に感じることもある。

独走して優勝するマラソンランナーもいるし、競争の世界から離れたところに身を置いて自分のペースで研究を進めて独創的な成果を出す研究者もいる。しかし、自分の絶対的な最善のペースを自分自身で知ることは案外難しい。人は意識的、無意識的に周りを見て自分の標準を決めている。自分のポテンシャルを最大限に発揮できるペースを知り、周りに流されずにそのペースで走ることができればよいのだが、それを知ることも実現することもいずれも難しい。そこで自分のポテンシャルを存分に発揮するための次善の策として自分の中での標準を上げる「競争仲間」がいる環境に身を置くことが大事になる。


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