大学入学共通テストの活用
22日に開催された文部科学省の有識者会議「大学入試のあり方に関する検討会議」にて、2025年実施の大学入学共通テストにおいても記述式問題と英語民間試験の導入の「実現は困難」とする提言案が示された。2021年の第一回共通テストが迫る2019年の秋まで、いずれも導入の方向で準備が進んでいたことを考えるとおかしな感じもするが、50万人が受験する全国的な試験で公平性が強く求められることを考えると結論自体は妥当だと思う。
この共通テストは1979年から国公立大学の共通1次試験として始まり、1990年には私立大学も利用できるセンター試験となり、今年から大学入学共通テストになった。開始してから40年以上経つがこれまで大きな混乱なく、毎年数十万人の受験生の試験を実施してきたことは、賞賛に値する。各科目の試験の内容を見ても高校で学ぶべき範囲の理解度を測るのに十分な内容になっていると思う。全科目マークシートであるがゆえに、受験生の能力の評価という意味では限界があるというのは確かにそうで、たとえば共通テストの数学で8割得点できた人の中には、東大の2次試験の数学で合格点を取れる人もいれば、1点も取れない人もいるだろう。ただ、数十万人レベルの人が受ける大規模な共通テストとしてはそれで十分で、後は各大学が個別の試験で、特に確認したいところをテストすればいい。高校での主要科目の学びが直接的に反映できる分、内容的にもたとえばアメリカのSATのようなテストよりも優れているように思う。
なので今の内容を大きく変える必要はないが、実施回数は増やしてもよいように思う。年3、4回実施して、さらに、高1から受験可能にできるといい。実は2021年度の大学入試改革に向けても共通テストの複数回実施は検討されていて、高校3年の授業や学校行事に影響を与えるということで見送られた経緯がある。早い段階から受験できるようにすると高校のカリキュラムが終わってない時点で受験する人が出てきて不公平だ、学校行事が行いにくくなる、受験に向けた準備が長引くことになる、というような高校側からの反対意見が多かった印象がある。しかし、受験生のことを考えるとむしろ自分の予定に合わせていつ受験できるか選ぶことができるし、むしろ、やりようによっては受験の準備を早めに終わらせることができ、主体的に動きやすくなる。高校卒業段階程度の英語力である英検2級を高1の段階で取ることが問題でないどころか望ましいことであるように、他の科目でも受験に必要なレベルをクリアできる人はどんどんクリアしていけばいい。複数回実施にあたって試験実施のオペレーションはよく検討しなければいけないが、高校による生徒の管理についてはあまり考える必要はなく、むしろ生徒が主体的に動ける状態を作る方が望ましい。
もう一つ、これは共通テストを使用する大学が検討すればいいことではあるが、マークシート方式の評価の限界を考えると1点刻みの点数をそのまま使わなくてもよいように思う。たとえば80点以上はA、60点以上80点未満はB、といったA~Dの評価を行い、後は評定平均、出願書類、面接、独自の試験、等、組み合わせて合否を判定できるとバランスの取れた評価になる。今も総合型選抜や学校推薦型選抜の一部で行われているような、たとえば特定の科目で80%以上のスコアを合格の目安とする、といった使い方も悪くない。この場合も複数回の受験機会があると受験生は一か八かの一発勝負ではなく、自分の見極めた上での勝負をしやすくなるだろう。
複数回実施して、総合型選抜にも柔軟に取り入れて、ついでにいえば、総合型選抜の実施時期のルールも撤廃することで、受験生は主体的に自分の学力を高めていきやすくなるし、大学側も学力も含めてバランスの取れた学生を採りやすくなる。試験の内容を無理やり変えなくても、運用の方法を改善することによって、より効果的に活用する余地が大いに残っているように思う。
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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。