洋々の志望理由書作成の講座でまず初めに受講生に伝えるのは「世界観」の重要性だ。大学が実施する総合型選抜においては魅力的な世界観を相手に伝えられるかどうかが合否を分ける。読み手に自分ならではの考え方・見方を感じてもらえるか、ユニークで面白いと思ってもらえるか、ということが大事になる。のみならずその世界観がその大学学部に関連している必要もある。いくら魅力的な世界観でもその大学学部での学びに関係していないとその大学の人々には響かない（そもそもその大学学部に対する志望理由書にならない）。

自分ならではの考え方・見方をその大学学部での学びと絡めて効果的に示すためには時間軸に沿って伝えることが有効だ。すなわち、これまでの自分を形作ってきた経験や環境、それを通して培われてきた今現在の自分の考え、そこに大学学部での学びを加えることによって、将来どのようなことを実現していきたいか、この過去、現在、大学での学び、その先の将来を一貫した形で伝えることによって、これからその大学で学ぼうとしていることをも包含する形で自分の世界観を伝えることができる。そして、その中で自分の将来像にとっての大学での学びの必要性を伝えることができれば、そのまま志望理由書としても成り立つ。

難しいのは何が魅力的な世界観か、というところだ。最も大事なのはその人らしさだと思う。どんなにきれいに過去、現在、大学、将来の流れを描いても、それがどこかで聞いたことのあるようなものだと魅力を感じにくい。自分自身を知り、他の誰かであるようなふりをしないことだ。志望理由書を作成する際にはつい過去の合格者の書類を参考にして作りたくなるが、自分とは異なる過去や将来像を持つ人の書類を真似ることはマイナス面の方が大きい。苦労することにはなるがゼロベースで自分自身のものを作っていく方がユニークな書類の完成に到達できる可能性が高まる。

高校時代何もしてこなかった、と言う人もいるが、何もしない、というのはどういうことだろう？仮にその期間、寝たきりであったとしてもそれは何もしていないことにはならない。同じだけの時間を過ごしているのであればその期間に考えたこと、経験したことがあるはずだ。経験自体に優劣はなく、それを活かせるかどうかはその解釈次第だ。そういう意味では誰もが魅力的な世界観を語る素地を持っている。