大学入試改革・新テストの行方


大学受験に使われる新テストについての議論が迷走しているように見える。センター試験に代わり2020年度から導入予定の新テストについて当面複数回の実施を見送るという案が先月末に文部科学省から示された。記述式を導入すると採点に時間がかかるため複数回の実施は難しいという判断だという。複数回の実施に対して高校側から「行事に悪影響が出る」「3年生が受験漬けになる」といった批判も出ていたそうだ。

大学入試改革の柱として記述式試験の導入と複数回実施の2つがあったが前者を優先した結果、後者を断念する方向になってしまった。私は採点に時間のかかるような記述式試験の導入にはどちらかというと反対で、複数回実施については大いに賛成だったので今の方向性は残念に思っている。

記述式試験は昨年末に問題例が公開された。国語で交通事故に関する統計資料について答えさせる問題があったり、数学で「スーパームーン」の見かけの大きさについて考えさせる問題があったりして、実社会での応用力が問われているように見えるが、逆に国語や数学の本質から離れてしまっているように感じる。社会や理科の科目であれば実社会につながるような問題もよいかもしれないが国語、数学でそういった問題が必要だろうか?無理に新しい形にしなくても既存のセンター試験の問題の一部を記述式に変えるだけでも十分なように思う。採点の大変さ、問題作成の難しさを考えると公表された問題例のような試験にすることについては、メリットよりもデメリットのほうが大きい。

一方で試験を複数回実施することには一発勝負でなく真の実力を評価しやすいという明確で大きなメリットがある。受験するほうも納得感があるだろう。せめて英検と同じように年3回くらい受験できるようになるといい。行事への悪影響、高3時の受験漬け、といった問題は、複数回受験できることでむしろ緩和できると思う。さらに学年に関係なく受験できるようにすれば、高1、高2のうちに徐々にクリアして、高3も行事や部活に打ち込む、ということも可能だ。

50万人以上が受験するセンター試験に代わる試験なので、公平さや運用しやすさを重視して、シンプルな形にしたい。場合によっては現状のセンター試験を年に複数回実施するようにするだけでもよいと思う。多面的な評価は重要で、かつ、必要だと思うが、すべての受験生に一律で同じ試験を課すのではなく、各大学学部がアドミッション・ポリシーに照らし合わせて独自に行うほうがいい。元々の「点からプロセスへ」の考え方は間違っていないと思うが、標準テストと各大学の選抜の境界が不明瞭になってきたところに問題を感じる。


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