大学入試改革・新テストの行方 2


先週17日に開催された文部科学省の高大接続システム改革会議(第11回)の資料が公開されている。新聞等での報道もあったがセンター試験に代わるいわゆる新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」のマークシート式の問題イメージ例もある。物理と世界史のみだがいずれも現状のセンター試験と比較して、受験生の実力を測るという意味でも、受験生を正しい方向で準備させるという意味でも大きく改善されている。センター試験の物理の問題は知識を問うものがほとんどで本質を理解していなくても公式が分かっていれば正解選択肢を選べることが多い。世界史もセンター試験においては1問1答形式で知識を問うような設問ばかりで、出来事の歴史的意義を問うような出題はほとんどない。それが今回の新テストの問題イメージ例では物理で受験生にその場で考えさせる問題があったり、世界史で社会的背景と出来事の関係を意識させる問題があったりと、それぞれの科目の本質の理解につながりそうな良問が多い。加えて物理で正解を桁ごとに数字で選ばせたり、世界史で選択肢の数を指定せずに正解を「すべて」選ばせたりと選択肢の内容を見て当てずっぽうで正解するのが難しくなっている。記述式にして人が採点する仕組みにしたら問題作成の幅は大きく拡がるが数十万規模の受験生に対する運用を考えるとこのあたりがいいところなのではないかと思う。

同時に公表された資料の中で、新テストの基本的な構成として、「記述式問題(当面、国語と数学)」、「英語の多技能を評価する問題」、「マークシート式の問題」、という3つの柱が挙げられている。記述式問題については「採点業務を効率的・安定的に実施するため、OCRの技術も活用し答案をクラスタリング(分類)する技術やコンピュータを活用した採点技術などの新たな技術の開発と活用を積極的に進める」とのことだが、現状のOCRの技術を考えても手書きの文字を公平に認識できるようになるまではまだまだ時間がかかりそうで、テクノロジーの進歩に頼るのは心許ない。運用面のことを考えると当面見送るのが妥当だ。先日、記述式の例題が公表された国語や数学についても今回の物理や世界史のようにマークシートのままで問題の質を高めればいい。「英語の多技能を評価する問題」については、今さらわざわざ新しく作成しなくても、TOEFL、英検、TEAPといった既存の民間の試験を利用すればいい。すでにそういった資格試験が大学受験でも採用されている中で、新たな試験を作成する必要性は全く感じない。

共通テストとしては、質を高めた「マークシート式の問題」のみとして、記述式や英語の多技能の評価については各大学学部の独自問題や既存の資格試験に任せればいい。そうすれば新テストの目玉である複数回実施も可能だし、これまでセンター試験の実施で蓄積したノウハウも直接的に活かせる。「大学入試制度改革」と喧伝される中、大胆に変えなければという思いもあるのかもしれないが、共通テストとしてはセンター試験の問題の質を少しだけ高めて、複数回の実施を実現できれば十分な成果だ。変えなければいけないのは各大学学部の独自の選考方法の方だと思う。


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