東大による英語民間資格の活用


東京大学が9/25付で2021年度一般入試において英語の民間資格を出願要件としないということを基本方針として公表した。多くの報道機関が「東京大、英語民間試験を必須とせず」といった見出しで報じている。1) 英語の民間資格、2) 調査書等、高校による証明、3) 1),2)のいずれも提出できない場合はその理由書、のいずれかを提出すればよいことになっている。

「公平・公正という観点からも実施の観点からも」英語の民間資格には課題があり、全受験生に求めることはできない、というのが東大の主張で、「当然のことながら、個々の受験生の英語力についていちばん正確に把握しているのは、高等学校の現場で日常的に指導にあたっている先生方」であるから、英語の資格を提出できなくても高校の教師が受験生の英語力を調査書に記述すれば代替できるとしている。「実施の観点」で言えば試験を受けなくてよくなるので問題はなくなるかもしれないが、「公平・公正という観点」での課題は調査書で代替することで本当に解決されるのだろうか?まず教師が受験生の英語力を正しく把握できるのかという問題がある。高校の英語の教師は、英検やTOEFLの試験よりも精確に生徒の英語力、しかも4技能の力を把握できるのだろうか?全国の高校の英語教師がそれぞれの生徒の英語力を同じ基準で判断できるとはとても思えない。加えて、仮に高校の教師が生徒の英語力を正しく把握できたとして、それをそのまま調査書に書く保証はない。大学合格者を増やすために甘めに評価する可能性もあるし、普段の教師と生徒の関係性が英語力の評価に影響することも十分考えられる。東大がそこまで調査書に信頼を置くのであればセンター試験や大学共通テストの代わりに調査書の評価で一次審査を行えばいいのではと思う。「文部科学省も従前から『入学者の選抜に当たって、調査書を十分に活用する』ことを各大学に要請していますので、この方針はまさにそれに合致したものと言えるでしょう」という東大の主張は、文部科学省に対する皮肉ではないかと疑いたくなる。

とはいえ、今回の決定は入試に関する重要度としてはあまり高くない。求める英語力のレベルがCEFR の A2 レベルだからだ。CEFRのA2といえば、英検であれば準2級程度であり、東大を受験する層であれば楽々クリアしているレベルだ。2次試験でも外国語の試験は課されるので、ごく少数の英語以外の言語で受験する人を除けば、そのレベルをクリアしていないと最終合格はいずれにしてもあり得ない。東大が調査書でも代替できるとしたのはその出願要件の重要度がそこまで高くないと判断したからだろう。今回の東大の発表は大きく報道はされているが東大の2021年度入試の本質の部分ではないと思う。


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