無知の知


ある事柄について知っているということは様々なレベルがある。たとえば、日本という国について知っているか、と問われたときに、日本人であれば、知っていると答えるだろう。ただ、日本について一体どのようなことを知っているだろう?日本に住んでいる人であれば日常生活の様子とか流行っているテレビ番組のことを知っているかもしれない。日本語も理解しているつもりだし、歴史も大枠のところでは理解している。でも、海外の日本研究者と比べたら意外と日本のことを意外と知らないかもしれない。日本の経済状況とか、政治体制とかについてきちんと説明できるだろうか?日本の宗教や芸術についてどれだけ語れることがあるだろうか?日本人の6割は月に1冊も本を読まないそうだが日本の文学作品について語れる人がどれだけいるだろうか。自分がよく知っていると思うことでも実は浅い理解しかしていないこともある。

日本人のほとんどは「徳川家康」について何らかの知識を持っている。ただ、徳川家康のことを知っているか、と問われて自信を持ってYesと答えられる人はどれだけいるだろうか。日本史上で最も重要な人物の一人だが日本史の教科書での扱いはそこまで大きくない。山川出版社の日本史Bの教科書には、1590年に関東に移され250万石の大名になったこと、関ヶ原の戦いに勝利したこと、1603年に征夷大将軍の宣下を受け江戸幕府を開いたこと、大坂の役で豊臣方を滅ぼしたこと、等の記述があるが、せいぜい1ページ程度の内容でしかない。これらのことを知ったら一応徳川家康について知っている、ことにはなるかもしれない。でもたとえばWikipediaの「徳川家康」のページには80,000字以上の情報がある。小説ではあるが山岡荘八の書いた「徳川家康」は文庫本26巻で全部で11,000ページを超える。背景を知らずに教科書に書いてある事実だけを覚えても、知っていると自信を持って言うことはなかなか難しい。

ある事柄の内容を覚えてそれを定期テストでアウトプットする、というトレーニングを受けていると「知る」ということが表層的な部分に留まってしまいがちだ。本来「知る」ということは深遠で、知ったつもりのことでも常にそのさらに奥がある。さらなる知を求め続ければ、わくわくする楽しさが止まることはない。


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