10分の審査のための準備


総合型選抜や学校推薦型選抜を受ける受験生の多くは半年以上かけて出願書類を作成する。作成にかける延べ時間が100時間を超える人も少なくない。一方で、大学側が1人の書類の審査にかける時間はおそらく5分から10分程度と推測される。志望理由書の最初の何行かを読んでこれはだめと判断されるケースも十分ありえる。提出した資料を隈なく読んでもらえるとことはあまり期待しない方がよいだろう。

面接も準備していたことのほんの一部しか聞かれなかったということがほとんどだ。10分から30分程度の面接の中で準備してきたことをすべて伝えられたとしたらそちらの方が驚きだ。

考えてみたら一般選抜の試験だって準備してきたことのほんの一部しか問われない。何百問と解いてきた数学の問題は本番の試験では数問しか出題されない。世界史で古代文明から現代にいたるまでのあらゆる地域の歴史を理解していても入試当日に問われるのは一部の地域の一部の時代についてだけだ。

だからといって試験で山を張って一部の範囲の勉強しかしないのはリスクが大きい(ある程度傾向をつかんで効果的な準備をすることはできるかもしれないが)。それと同様、聞かれそうなところだけ集中して面接の準備をする、あるいは、しっかり読んでもらえそうなところだけ出願書類に丁寧に書く、ということはお薦めできない。

当日何を問われるかわからない試験や面接と比較すると出願書類は提出するものが明確に指定されており準備はしやすい。与えられた書式に記入するものに加えて資料を添付できることも多いが、資料も含めて隅々まで丁寧な記述を心掛けたい。ただ、書いたことをすべて読んでもらうことは前提にしない方がいい。たくさん資料を添付しても見てもらえるのは興味を持ってもらった何点かだけだろう。目指すべきは全部読んでもらえなくてもある程度伝わるし細かく読むとさらに伝わる、というような、ぱっと見もよく、かつ、緻密でもある出願書類だ。神は細部に宿る。ほとんどの人が見過ごすような細かいところでも5分~10分の審査の中でいくつかは目に入り、それらが意外と全体の印象に大きな影響を与える。


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