東芝


東芝が不適切会計の問題を今年の4月に公表してから半年以上経つが、未だに連日のように新聞の紙面を賑わせている。株主が東芝に対して集団訴訟を起こすという話がある一方で、東芝自体が旧経営陣に対して損害賠償請求訴訟を起こすという話もある。昨日の日本経済新聞1面の記事によれば、証券取引等監視委員会が行政処分として、東芝に対する課徴金は70億円を超え過去最高額となる見込みとのこと。第三者委員会の調査では利益至上主義の経営陣が社内で圧力をかけ過ぎたことが不適切会計を招いたとしていて、報道もだいたいそれに沿った感じでされている。

「東芝の不適切会計問題で、田中久雄社長が営業利益を就任時の2倍に引き上げ、過去最高を更新しようとして現場に予算達成を強く求めていたことが14日、分かった。調査中の第三者委員会も、田中社長のこうした『こだわり』が問題を招いた一因として注目しているようだ。」(産経新聞 7/15’15)

「本体の社長らがカンパニートップや子会社社長と面談する『社長月例』では『チャレンジ』と称した収益改善の目標値を設定。とりわけ佐々木副会長が社長を務めた2011、12年度は過大な目標が示されていた。報告書は『各カンパニーのトップらは目標を必達しなければならないというプレッシャーを強く受けた』と指摘した。」(日本経済新聞 7/21’15)

「『チャレンジ』。報告書によると、東芝では高いレベルの収益目標をそう名付け、経営トップらが現場に達成を強く迫っていた。目標設定は『ある期間の利益を最大化する当期利益至上主義だった』。担当者らはその圧力に抵抗しきれず、会計の数字をいじることで利益を水増しした。」(朝日新聞 7/21’15)

こういった報道からは不当にプレッシャーをかけた経営者に問題があったような印象を受ける人が多いだろう。しかし、厳しい目標を設定して必達のプレッシャーをかけるということ自体は多くの企業で行われていることだ。今をときめく経営者であるファーストリテイリングの柳井正氏、ソフトバンクの孫正義氏、楽天の三木谷浩史氏あたりが社内にかけるプレッシャーは東芝どころの話ではないのではないかと想像する。それが社員の活躍を促し、会社の発展につながるか、東芝のように虚偽会計に向かわせることになるのか、どこで違いが出るのだろう?プレッシャーのかけ方に巧拙があるのだろうか。

もし東芝の経営陣がプレッシャーをかける際に不正会計をしてまでも、ということを匂わせていたとしたらそれは問題だろう。不正会計を知っていてもそれを見逃すような雰囲気があればそれは経営陣の問題と言える。もし不正会計など全く考えたこともなかったということであれば東芝の経営陣のプレッシャーのかけ方が拙かったということだろうか。プレッシャーの目的は精神的ストレスを与えてより大きな力を発揮することにあるが、巧くやらないと委縮させたり、逃げることばかり考えさせてしまったりする。社員のモチベーションを正しい方向にあげることができなかったのはやはり経営陣の問題ということになるだろうか。

誰のせいかと突き詰めていくと旧経営陣の責任ということになるのは仕方がないと思う一方で、その責任が「プレッシャーをかけ過ぎたこと」だとすれば経営の難しさを改めて感じる。


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