しっぺ返し戦略


ゲーム理論の「囚人のジレンマ」は、お互い協力しあうよりも自分だけが裏切る方が得をするという局面で、お互いに裏切りを選ぶと、結局、協力しあうときよりも両者が損をする、というジレンマである。相手が裏切る場合、裏切らない場合、どちらの場合でも自分が裏切った方が得になるため合理的に考えると裏切りを選ぶことになるが、双方が裏切りを選ぶと、双方が協力する場合より、どちらも損をする、というところにジレンマがある。

取引が1回だけの場合は裏切りが合理的な選択肢になるが今後も取引が何度も続く場合には裏切り続けることが最適な選択肢とは限らない。現実の人間社会でも「囚人のジレンマ」的な場面は少なくないので、どのような戦略を採るのが最適なのかとても興味深い。

随分前だが学生の頃読んだゲーム理論の本に書いてあった実験のことが今でも印象に残っている。コンピュータのシミュレーションで「囚人のジレンマ」の状況を作り、どのような戦略で協力、裏切りを選ぶのが最終的に得をするかというのを調べるというものだ。ひたすら協力する、ひたすら裏切る、相手に裏切られるまでは協力して裏切られたら次からはずっと裏切る、等の戦略を設定して、お互いに取引をさせる。面白かったのはその結果で、いろいろな戦略を競わせたところ「しっぺ返し戦略」が最も得をしたということだった。「しっぺ返し戦略」は、最初は協力し、その後は相手の手をそのまま真似する、という単純な戦略だ。相手が協力してくれば次の取引で協力し、相手が裏切ってくれば、次の取引で裏切り返す。一旦裏切っても相手がまた協力してくれば協力しなおす。

感情のないコンピュータによるシミュレーションで「しっぺ返し戦略」が有効である理由が本を読んだ当時も今も理解できていないし、他にどのような戦略があるかによっても結果は大きく変わるはずで、どのようなときにも「しっぺ返し戦略」が最善だと信じるのはリスクがある。ただ、現実の人間社会において「最初は信頼する、でも裏切られたら裏切り返す」というシンプルな戦略はなかなか有効なのではないかと思っている。人間同士がお互いに信頼し合う関係を築くのは簡単ではない。世の中にはいろいろな人がいるから初めは疑ってかかる方がよい場合もあるだろう。しかし、信頼することのリスクがそこまで大きくない場合はまず信頼するというのを原則にしてもよい。たまに裏切られることがあればそのときは裏切り返せばいいし、それによって多少損することがあっても、その分他で多くの信頼関係を結ぶことができるのであればそっちの方がいい。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。