教わることと学ぶこと
コンピュータプログラムのコードを書いていて、より効率的な方法があることを知ったときにもっと早く知っていればよかった、ということはよくある。ほんの少しのことを知るだけでコードを書く時間が半減したり、書いたプログラムの実行スピードが倍になったりする。もっと早く知っていたらこれまでのプログラムの作成にそこまで時間はかからなかっただろうし、コードがもっときれいに書けて改変するのも簡単だったろうに、と思ってしまう。
だからといって初めに大事なことを一通り習った上でコードを書けばよいかというとそれも簡単ではない。どんなに効率のよい方法があったとしても、その必要性を感じていないと習得して使いこなすことは難しい。プログラミングを学んで間もない頃、「オブジェクト指向」の概念を知り、本を読んだり自分で試したりしてどういうものかはある程度わかったものの、なかなかそのメリットを実感として理解することができなかった。その有用性を理解したのは少し規模が大きいシステムのコードを書いたり、過去のコードを再利用したりするようになってからだ。自分で問題意識を持っていないと、どんなにいい方法であってもその有難さを実感できない。
ビジネススクール(経営大学院)の多くは社会人経験を入学の要件としている。私自身も企業に5年勤めてからビジネススクールに留学した。実際に企業で日々の仕事に取り組んだ経験があることで授業の理解が深まった実感がある。現場で経験していないことについてフレームワークを提示されてもなかなか理解できない。
洋々の小論文の標準的なサポートは月2回のみだ。その2回のサポートを味わい尽くすには自分で課題に取り組み自分自身でたくさん考えておく必要がある。その中で難しく感じる部分や問題意識を持っていると同じことを教わっても吸収力が違う。
授業からでも本からでも何かを教わることで急に視界が広がることがある。これまでやってきたことが馬鹿馬鹿しくなるほど自分の考え方が進化したように感じることもある。そういうときは、もちろん教え方がいい、ということもあるだろうが、それ以上に自分の準備ができていたということだとも思う。しっかり準備してきた人が時宜を得た教えを受けたときに学びは最大になる。
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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。