タイムパフォーマンス


自分自身いかに時間を効果的に使うか、ということを常々考えてきたような気がするのに、最近のタイパ重視の考え方に違和感を覚えるのは、それがただ単に時間を短縮する方向に向きがちだからだ。動画を倍速で視聴したり、本の要約だけ読んだり、同じパフォーマンスをより短い時間で得ようとする。コスパでもタイパでも分母のコストやタイムは測定しやすい一方で分子のパフォーマンスを測定するのは難しい。ついつい測定しやすい方に注目するので安い方、短い方に向かいがちだ。費用や時間の削減によって単位当たりのパフォーマンス向上につなげようとする。費用や時間が最大のところでコスパやタイパが最大になる可能性もあり得るはずだがあまりそのようには考えられていない。

パフォーマンスの測定の難しさはそもそも何のパフォーマンスを求めるのかが明確でない、ということにも因る。パフォーマンスは得られる価値と言い換えてもよいだろう。動画を倍速で視聴する際に、動画から得られる価値は何か。たとえば大学の授業の動画であれば学び=価値、と言えるかもしれない。もし半分の時間で同じ学びが得られるのであればタイパがよいと言えるだろう。実際、間延びした授業であれば倍速にしても得られるものは変わらないようにも感じる。一方で動画でドラマや映画を観る際にそのパフォーマンス(あるいは価値)とは何かということは意見の分かれるところだろう。知識として知っておきたいのか、体験として楽しみたいのか。前者であれば倍速で見てタイパがよくなるかもしれないが、後者であれば倍速にすることでパフォーマンスが著しく損なわれタイパが悪くなる可能性がある。

もっと速く本を読めたらいいな、と思うことはあっても、要約を読んで済ませたいとはあまり思わないのは要約だけでは元の本の価値を大きく減じる上に本を読む至福の時間が失われるからだ。読書の楽しい時間自体が価値と言える。パッケージツアーで短期間にたくさんの観光名所を見て回るのと最も興味深いところに絞ってゆっくりじっくり味わうのとでは、訪問先の数をパフォーマンスと捉えるのであれば前者の方がタイパがよいと言えるかもしれないが観光体験という意味では後者の方が上回るかもしれない。価値観は人によって異なるのでそれぞれのパフォーマンスを追求すればよいがいずれにしても時間よりも価値(中でも測りにくいもの)に注目する方がより豊かな時間の使い方、つまり、よりよいタイムパフォーマンスにつながることもある。


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