倍率の誤謬


大学の総合型選抜では一般選抜における偏差値のようなものがないので入試の難易度がわかりにくい。一般的な傾向を言えば、一般選抜における偏差値と総合型選抜の難易度は正の相関がある。偏差値が高いのはそこに行きたい人が多いからで、総合型選抜でもそれは変わらない。ただ、総合型選抜は大学によって募集人員が大きく異なるので一般選抜の偏差値が高いところでも比較的合格しやすいところもあれば逆に偏差値がそこまで高くないところでも難しい入試もある。似たような科目で競う一般選抜とは異なり、総合型選抜では試験の内容が大学によって大きく変わる、ということもあり、入試毎の難易度を数値で示すことは難しい。慶應行くためにはやっぱり英検準1級くらいはないといけないのでしょうか、評定平均5に近くないとだめなのでしょうか、というような質問をよく受けるが、そのようなことはなく、一つの指標で難易度を示すのは難しい。英語の資格や評定はそれなりに大事だし、難易度との相関性はなくはないが偏差値のように上位校から順番に並ぶようなものではない。

そのような中で頼りにしがちなのが「倍率」だ。志願者の数を合格者数で割り、合格者の何倍の人が受験しているのかを示す。その数字が大きければ大きいほど競争率が高いことを表す。ほとんどの大学で入試毎の倍率を公表しているので比較もしやすい。アメリカの大学でも、分母と分子が逆だが、acceptance rateあるいはadmit rateとして合格率を公表しているところが多い。HarvardやYaleの合格率は3%~5%程度で倍率でいうと20倍~30倍になりそれを聞いただけで難しそうと思ってしまう。かつての日本の司法試験も合格率が2~3%で、その数字が最難関の資格試験であることを示していた。

という感じで難易度を知る材料にはなるのだが倍率は受験する母集団が変わるとまるで性質の異なるものになる。それなのに数字になるとその数字自体が絶対的な意味を持っているかのように見えてしまうことが問題だ。実際には5.0倍でもそこまで難しくない試験もあれば、1.5倍でも難しいケースもある。東京大学理科I類一般選抜の昨年度の倍率は2.6倍だったが、数字だけ見るとそんなに高い感じがしない。総合型選抜で倍率2.6倍だったら比較的与しやすい試験だという印象を持つ人も多いだろう。

倍率は参考にはならなくはないが難易度を測る指標としては頼りない。参考にするときにはそれぞれの受験者層も意識する必要がある。出願要件を満たしていて自分がそこに合っていると思えるのであれば倍率が多少高く見えてもそれに惑わされずにチャレンジしてみたい。


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