経営者保証


今月初めに日本経済新聞に「中小企業融資『経営者保証』を制限へ」という記事が掲載された。金融庁が2023年から金融機関の中小企業向け融資で「経営者保証」を制限するとのこと。現状、中小企業が金融機関から融資を受けようとすると「経営者保証」が求められることがほとんどだ。「経営者保証」を受け入れると企業が融資を受けてそれを返済できないときに経営者個人が肩代わりして返済しなければいけないということになる。

金融機関としては貸したお金は必ず回収する、というのは当然のことだ。金融機関が融資するのは基本的に自社の資金ではなく預金者のお金だ。融資先の会社が倒産したからといって預金者のお金を取り戻せないのは困る。会社が倒産するのは経営者に問題があったからで、会社から回収できなければ経営者に責任を取ってもらって払ってもらう、という考え方もわからないでもない。会社が倒産しても経営者の責任者を問えないとなると経営者が借りたお金を使って奔放な経営をした挙句、倒産して借金を返さずに一切の責任を負わずにとんずらする可能性だってある。

一方で中小企業の経営者の立場からすればただでさえ不安定でリスクの大きい事業を営む中で個人的な保証を求められることは精神的にも負担が大きい。経営に失敗することが職を失うだけでなく個人的な破産にまでつながりかねない。安定した職を擲って起業しようとする人は、収入が不安定になることを覚悟するだけでなく、個人的な資産を失うリスクまで抱えることになる。

借りたものは返さなければいけない、というのは当たり前だし、経営者にはそうするためのプレッシャーをかけなければいけない。ただ、個人的な破産までを視野に入れなければならないとなると起業や経営者になるためのハードルが高くなり過ぎる。そういう意味で、金融機関側にもリスクを負わせる、今回の金融庁の方針は歓迎できる。起業したり、会社を継承したりする人のリスクが軽減されることも大事だが、経営者保証に頼れなくなることで金融機関側が事業を選別する能力を培っていくことも期待できる。

融資だけでなく、投資環境の充実も必要にはなるが、事業を見極める力のある金融機関が増えて、一定のリスクを取ることのできる起業家や経営者が増えれば日本経済にとってのメリットは大きい。


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