学習や教育を取り巻く環境の変化 2025
AIを活用した教育サービスを提供する企業が増える中、日本の公教育ではAIの活用はあまり進んでいないようだ。OECDの「国際教員指導環境調査」によれば、日本の小中学校におけるAIの活用率は55か国中54位とのこと。教育におけるAI活用にはリスクもあり、54位がよいのか悪いのかは意見が分かれるところではある。教材のデジタル化も全面的に進んでいるわけではない。小学5年から中学3年を対象に英語と算数・数学のデジタル教科書が本格導入されたが、デジタル、紙のいずれにもメリット・デメリットがあり、どちらにすべきかの結論は出ていない。ただ、デジタル教科書が正式なものとして認められる方向には進みそうで、中央教育審議会は2030年度ごろからのデジタル教科書の導入を了承した。ベネッセホールディングスの進研ゼミ(高校生向け)は完全デジタル化するそうで紙の教材を併用するタイプは2027年3月までに終了するという。増進会ホールディングスのZ会の中高生向け講座も今年度から完全デジタルに移行した。民間企業の場合は学習効果よりも効率化の意図の方が大きいかもしれない。
昨年12月に文部科学省から小中高の学習指導要領の改訂に向けた諮問がなされ中央教育審議会での論点整理が始まっている。①「主体的・対話的で深い学び」の実装、②多様性の包摂、③実現可能性の確保を基本的な考え方として、2026年度末までに答申としてまとめられる予定になっている。実際に教育現場に適用されるのは2030年度になる見通しだ。
通信制の高校に通う生徒は増え続けている。今年初めて30万人を超え、全国の高校生に占める割合は9.6%にまでなった。通信制高校を運営する事業者も増え、2025年度には332校になった。この影響は大学にも及び、KADOKAWA傘下のドワンゴと日本財団が運営する通信制の大学「ZEN大学」が4月に開学し、1期生3,380人を迎えた。
2024年度に初めて大学入学者数が募集人員を下回り、以前から言われ続けていた「大学全入時代」が本格的に始まったように見えたが、2025年度の大学入学者数は648,430人と募集人員の635,250人を2%上回った。ただし、今年から前年までの統計に含まれていなかった外国人留学生を対象とする選抜を含む数字になっている。河合塾によると難関大学の志望者と理工系志望の女子が増えたようだ。私大の苦境は続き、私大を経営する学校法人のうち経営が正常状態にあるのは半数以下だという。文部科学省が留学生を増やすために大学の定員規制を緩和する動きもあった。
2025年度の総合型選抜による大学入学者数は前年から29%増加し12万6000人を超えた。2020年度と比べて80%増えている。全大学入学者に占める割合も20%となり益々プレゼンスを増している。一方で一般選抜での入学者の割合は46%となり、こちらの割合も一貫して減り続けている。東京大学が2027年9月に創設するという「カレッジ・オブ・デザイン」の内容がより具体的になってきた。主に日本の高校生を対象としたRoute A、主に帰国生や留学生を対象としたRoute B、それぞれ50人ずつ、計100人を募集する。2026年10月頃出願が開始され、2027年2~3月に結果が発表される予定だ。それとは別に東大でAIや宇宙など先端分野において学部を二つ新設する構想がある、という日経の報道も10月にあった
大学受験においては年内入試の学力試験が論点になった。昨年東洋大学が学力試験メインの学校推薦型選抜を実施したことが物議を醸し、文部科学省、大学・高校の関係者で協議が行われた。結局、年内入試において学力試験を実施する場合には小論文や面接などと組み合わせて行う、という条件付きで容認されることになった。それを受けて東洋大学の基礎学力テスト型入試は今年総合型選抜に切り替わり、調査書と事前課題(小論文)に対する配点が明示されるようになった。ただ、その配点はそれぞれ全体の3~5%であり、かつ事前課題は400字と短く、基本的に学力中心に評価する試験であることは変わっていない。高校側からの批判の声も大きく来年以降どういう形に落ち着いていくのかは予断を許さない。
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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。
