脳で覚える


スマホやタブレットのおかげでどこからでもインターネットにアクセスして必要な情報を取れるようになった。行き先の駅名さえわかれば、どの路線かわからなくても乗換案内を使って最短経路を探すことができるし、駅からの道を知らなくてもナビ機能を使って目的地に辿り着ける。その日の予定も覚えていなくても必要なときにスケジュールを確認すればいい。友人の誕生日もSNSのアプリが教えてくれる。電話番号もメールアドレスも覚える必要はない。自分の電話番号やメールアドレスさえ覚えていない人も少なくないのではないか。

人は今まで様々な道具を開発して自分の身体の一部のように使ってきた。料理に使う包丁、大工に使うノミ、カンナ、のこぎり、かなづち、音楽を奏でる楽器、農業や漁業に必要な道具、私たちも使うがその道のプロの人は手足のように道具を使いこなす。多くのスポーツではいかに上手に道具を使うかが勝敗を決める。タイガー・ウッズがゴルフクラブを通して感じるボールの感覚は、普通の人が自分の生身の身体を通して感じるもの以上に研ぎ澄まされているはずだ。スマホやタブレットも使いこなせば自分の身体の一部のように使えるかもしれない。ペン(これも道具だが)で書くよりスマホでの入力の方が速いというひとも多いだろう。

しかし、包丁やのこぎり、あるいは、テニスのラケットや野球のバットのような比較的「原始的」な道具が身体の一部分を発展させたような形で使うのに対し、スマホやタブレットのような機器は人の機能を置き換えるようなところがある。自動車が足の機能を発展させるわけではなく、どちらかというと足の機能を置き換えるためのものであるのと同様、スマホやタブレットも脳の機能を発展させるというよりはそれを置き換えるものだ。

脳の機能を置き換える道具を使うことがいいことなのか悪いことなのかは簡単には判断できないが、少なくとも道具を使うだけでなく自分自身の脳をもっと使ってもいいのではないかとは思う。携帯電話を持つ前は友人の電話番号をそらで言えたし、地図や道順も今よりきちんと覚えていたように思う。

覚えるということは少し面倒ではあるが意外と便利だ。最近何となく、電車の時刻表、Webサイトの各種ID・パスワード、自分のクレジットカードの番号などを覚えてみたのだが、案外役に立つ。今までスマホやPCに頼り過ぎていたせいか、敢えて自分の頭で記憶するということが新鮮に感じて、自分の足で歩いたときに感じるのと同様の気持ちよさもあった。円周率を10万桁覚えている人もいるくらいだ。使わないのは勿体ない。道具を否定するわけではないが自分自身の脳ももっと活用していきたい。


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