まずはその感想に至る本編の話を少し。 支店で稼ぎ頭と言われていた人物が、厳しい営業ノルマ達成のために架空融資に手を染める一編がある。ひょんなことからその不正が銀行にバレ、おそらく解雇は免れないだろうとなった日の夜、何も知らない家族の元に帰る。奥さんと子供とご飯を食べながら、「いつから間違えた?」と後悔しながら、最後の団欒を味わうという話。 この話について解説では、「必死に働く者すべての心に訴えかける」、「涙なしには読むことができない」と書いてあった。分かるような分からないような、上手く自分の気持 [→続きを読む]

ジムのサウナに入る時、僕はだいたい文庫本の小説を読んでいる。家から200mくらいのところにあるブックオフで100円まで値下げされた本棚コーナーで、適当に気になったものを買い求めて読んでいる。読み終わったものはまた同じブックオフに持って行って買い取ってもらう。サウナで読んでいるが故に、ページによっては汗滲みができていたり、熱でよれた部分があったりもするのだが、だいたい5~10円くらいで買ってもらえる。キャッシュフロー的には1冊95~90円くらいで読ませてもらっているということ、手頃な娯楽だ。 僕は [→続きを読む]

今年はなかなか桜が咲かない。僕はあいにく花を愛でるタイプの人間ではないけれど、せっかく目黒川沿いに会社があるから毎日ちゃんと気にするようにはしている。けれど、今年はまだ咲いていない。 今週、僕らの会社前を上流の中目黒駅方向に遊覧船が何隻も通って行ったけれど、ちょっと気の毒だった。日本人ならまだしも、わざわざ時期を合わせてきたのであろう海外の人なんかは特に可哀想だった。たしか目黒川の”さくらまつり”もこの3月最後の週末に設定されていたみたいだけど、残念な感じだったに違いない。桜の咲いていない目黒川 [→続きを読む]

日経平均株価は今年の2月22日に、1989年末につけたこれまでの最高値を更新した。 この日の夜は会社の部署メンツでの飲み会があって、二次会の居酒屋のテレビで盛んにそれが取り上げられているのをボンヤリ観た。仕事柄、株価や経済の動きには割と敏感な方だから、当然ながらこの事実は知っていたけれど、その取り上げられ方を見ていると、改めてその重みを感じた気がした。 1989年と言ったら、僕が生まれる2年前だ。「バブルが弾けてから”失われた30年間”だった」、この最高値行くか行かないかの前後数ヶ月、よくこんな [→続きを読む]

さてその答えは、つまり映画は、思った以上に映像としてホラー寄りで描写もグロテスクだった。僕が原作をなんで気に入っていたかって、要はお化けとか超常現象的なものじゃなくて生きた人間の怖さで、ビックリさせられる系の怖さではなく自分で想像してゾワッとなる系の怖さだったからだ。ところが映画は、映像にしようとすると仕方ない部分もあるんだろうけど、割とお化けチックな匂わせや、ビックリさせられる系のホラー要素が強めだった。んでもって思った以上に血が出てきたりもして、ちょっと期待してたのとは違うんだけどな、とは思 [→続きを読む]

この前、久しぶりに映画館で映画を観た。それが “変な家”だ。例えばデートとかで映画を「観る」ことが目的で観たというのではなく、付き合いや暇つぶしとかではなく、自分で観たいと思った映画だった。そういうのって、映画館で映画を観る以上になんだかすごく久しぶりな気がした。 “変な家”は漫画の原作(漫画よりさらに原作があったらごめんなさい)があって、それを眠れない日の夜に携帯でボーッと読んだことがあった。InstagramかTwitterの鬱陶しい広告の一つで、暇だからともポチッて読んでみた感じだったと思 [→続きを読む]

放置が終わると、また一巻き一巻き手作業でクルクルを取られた。「初めてだったので髪質が分からなかったんですが、ちゃんとパーマ入ってますね〜」なんて言われながら。少しずつ明らかになる自分の斬新な頭に、これは果たして似合っているんだろうか?と不安になった。「今日1日はできるだけシャンプーとか控えてください」と言われた。汗かくのはいい?と聞いたら「午後トレーニングでもするんですか?」と苦笑された。結構いろんな話をしたから、どういう人間か、バレてた。 最後にまた髪を洗ってもらって、ワックスでセットしてもら [→続きを読む]

髪を洗って軽く切ってから、いよいよクルクルしてもらった訳なのだが・・・テレビで見る大阪のおばちゃんなんかのイメージで、頭の中では分かっていたつもりだけど、パーマというのは一巻き一巻き手で巻いていくんだね。脱脂綿みたいなのに薬品を染み込ませて、それと髪の毛一掴みを細いプラスチックの筒に巻きつけて輪ゴムで留める。それの繰り返し。機械とかで一気にクルクル〜ではないのだ。一巻き一巻き、実に現代ぽくない地道な作業だ。「なるほど、これは2時間かかるわな」と気がついた。薬品の匂いは、確かに今まで美容院で嗅ぐそ [→続きを読む]

美容院は“五反田”と時間帯で検索しただけで、詳しい場所は行く直前まで把握していなかったけれど、東口のいわゆる歓楽街の通りに面しただいぶ怪しいビルの2階にその美容院はあった。来る前にシャワーを浴びて、からろくに乾かしもせずセットもせず自転車に乗って五反田まできた。当然頭は爆発している。そんな風貌で怪しいビルに入っていくと、朝から並んでパチンコして、手持ちがスッカラカンになって、遂に消費者金融に手を出しに行く廃人寸前のギャンブラーみたいな気分になった。 僕はいわゆる”イケてる側の人間”として生きてき [→続きを読む]

32歳にもなって大声で言うようなものでもないけれど、僕には「人生に一度くらいパーマとかかけてみたい」という野望があった。もちろんパーマをかけるためにはそれなりの髪の長さが必要になる。しかし僕は生まれてこのかた髪を伸ばしたことがなかった。柔道の競技特性上および前時代的な文化上、現役中に髪を伸ばすなんてことはあり得なかったし(僕としてはそれを特に嫌だと思ったことはない)、引退してからも暑苦しいのが苦手でずっと短髪で過ごしてきた。目安としては、耳に髪が触れない、おでこに髪が垂れてこないという水準をずっ [→続きを読む]