目的と手段は簡単に入れ替わる。もともとある目的を達成するためにやっていたはずのことがいつの間にかそれ自体が目的になってしまう。政治家になって活躍するために選挙に勝とうとしていたはずなのに、逆に、選挙に勝つために政治家として実績を残そうとする。あるいは、より大きなことを達成するために資金が必要だったのに、いつの間にか、お金のために何かを達成しようとする。 入れ替わらないまでも、目的と手段は混同されがちだ。将来の目標を聞かれたときに職業の種類で答える高校生は多い。しかし、職業は基本的に何かを実現する [→続きを読む]

好きな作家の新作が出てくるのは待ち遠しい。他の作家ではいけない、その作家でないといけないのだ。村上春樹氏のファンはずっとその新しい小説を待っていて、数年に1回発売されると瞬く間にベストセラーになる。新作でなくても、たとえば今年初めに亡くなったJ.D. サリンジャー氏の未発表作が発売されることがあれば、ファンにとってはたまらない。Holden CaulfieldやGlass家の世界に惹きつけられた人は、その世界の感覚をもう一度新鮮な気持ちで味わいたいと思うのである。 音楽でも同じ。自分の好きなアー [→続きを読む]

私は基本的に無駄が嫌いでシンプルで必要十分なことが好きだ。鞄の中も、財布の中も、必要なものだけを入れておきたい。机の上もよく使うものだけを置いておきたい。しかし一方で時には冗長性も大事かなと思うことがある。 アップル社のスティーブ・ジョブズ氏はスタンフォード大の卒業式で行った有名なスピーチで、後から振り返るとすべての経験が今につながっているが当時はそれがどこにつながるのか考えもしなかった、と言っている。 そのとき必要十分と思うことだけをやっていては未来に広がりがない。どきには無駄と思われることを [→続きを読む]

日本人として誇るべき日本のよいところはたくさんあるがその中でもはっきりとした四季の美しさは、古くから言われ続けていてもなお、言いたくなる。冬から春に変わるときに梅が咲き、桜が咲いて、だんだん空気が緩んでくると同時にいろいろなことが始まりそうな予感で前途洋々になってくる気持ちももちろん悪くない。しかし、急に涼しくなり、快適な一方で、少し次の冬を感じるせいか、憂いを帯びた感じの今の時期は春に劣らず好きだ。特に金木犀の香りがするといろいろな感覚が敏感になり音楽も心に沁みるし本を読んでも感動するし食べ物 [→続きを読む]

お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志氏が結婚する数年前に本か雑誌かで自身の結婚しない理由について述べていた。その理由はよく覚えていないが、面白かったのは、6対4という表現だ。結婚したくないというのが6、結婚したいというのが4だという。つまり、絶対結婚したくないというわけではなく、結婚したいという気持ちもあるが、今はたまたま6対4くらいで結婚したくないという気持ちの方が強いだけ、ということだった。当時、独身生活を謳歌して結婚なんて考えてもいないように見えた「松ちゃん」がそんなことを言っているのを意 [→続きを読む]

民主党の代表選に誰が出るかという話題がマスコミを賑わせている。世間からの風当たりは強いが、小沢一郎氏の出馬も取り沙汰されている。正直なところ、菅首相、小沢氏のどちらの方が首相として日本を正しい道に導くのにふさわしいのかはわからない。しかし、どちらがなるにしろ、なったからには自分の信じるべき道を進んで、必要なアクションをどんどん取ってもらいたい。日本の政治家にとって、首相以上にやりがいのある職はないはずだ。首相になったら、その先はないのだから自分の信じることをひたすらやればいい。そんな清々しいこと [→続きを読む]

必要十分条件の考え方は論理的思考の中で欠かせない。小学校で習う算数と中学以降に学ぶ数学の最も大きな違いは、算数では「十分」でよかったのが、数学では「必要」であることも求められるということなのではないかと思う。 という数式があった場合に、xに当てはまる数を順番に考え、x=1 であればこの式が成り立つことを見出すのは算数的な考え方。確かにx=1はこの式を満たすが、数学ではx=1である必要があるか、というところまで考える必要がある。つまり、x=1ならば(1)が成り立つということだけでなく、(1)を成り [→続きを読む]